第18章 美術品のように愛でないで
「オマエさー、医務室でいつも硝子とお茶会してるだろ?僕とだって出来るよねー?」
『……悟が来たら絶対長居するでしょ、怪我人優先でーす』
再び頬擦りを始める大きな甘えん坊。
「負傷だけじゃなくて、心のケアもあるじゃーん?寂しん坊のケアも大事だよ?こんな風に、ね?」
毎日こんな事してんだけど、これケアになってるか…?と疑問を持ちながらもすり寄る頭に手を伸ばして撫でる。と言っても背後だから届いたのは指先だけ。ふわふわとした髪に触れた程度。
『もうねんねしなよ、そんなに擦りつかれたら私が寝れないし』
「毎晩のルーティンなんだもん、これ。落ち着くんだよねー……
じゃあ、そろそろ寝るけれどハルカもちゃんと寝なよ?睡眠不足は貧血にも影響あるからねー。オマエには常に気を付けて貰わないと!」
はいはい、と心配してくれる悟に笑うと、一度私の頭を撫でてそのまま背後で定期的な呼吸音を感じる。
全くもっていつも通り。夜に繋がる頻度が高かった頃と、ぴたりと止んで今日に至るまでずっとこんな感じは変わってない。普通、好きな人でも居たら触りたくも無さそうだけれどさ……べたべた触るんだよね。こんなんだから他にいい人居る、なんて思えないけれど…。
少しだけ不安になりながらも私も悟を追うように瞼を閉じた。
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医務室で治療済みの書類を書く。
日によって、というかほんと偏りがある。今日は随分と朝から忙しいんだけど。
『くあっ……はぁ、ねむ』
朝、教室へと出席して早々にお呼び出しの電話が来た。
補助監督生や窓、呪術師と大変だなぁ。なんも知らないからって生徒として入ってきてて良かった。いつも見かけない人達を治療しては見送って。今の時期って忙しいイベントあったっけ?たまたまか?
絶対休みもきちんと取れない職だよね、呪術師。でもどんなに忙しくても悟は私に合わせてくれるんだよね……。出来るだけ放課後に部屋に戻れるように、だったり休みを合わせたり。たまーに宿泊を挟む時は嫌そうに行って予定よりも早く帰って来たり。