第18章 美術品のように愛でないで
162.
ベッドの上でただ横になる私。
キシッ…とベッドを僅かに軋ませて悟は私の真横に潜り込む。背後から包み込む様に腕を回し優しく抱き寄せられてる。
すりすりと髪へ、耳へと頬擦りをして、ククッ、と小さく笑った声。大きな猫みたいにすり寄ってくるのは良いけれどさ。どきどきしながら、今日は来るかな、なんて意識をしてたんだけど……今日も無かった。触れる手はただ愛でるだけ。深く求めるなんてことはなくて、ここの所おかしいくらいに全く手を出してこなくなった悟。
少しだけ悶々としながら薄暗い部屋を見つめる。見えない…私の背後で腹部を優しく抱き寄せてる悟をずっと考えてた。
「明日から硝子、3日間休みだって。オマエを独り占め出来るなら僕、医務室に呼んじゃおうかなー?」
楽しそうな声色。無意識なんだろうけれど、後頭部に話してる悟の吐息が掛かってぞくぞくとする。割と今、したい方なんだけれど今から始めたら明日に響いてしまいそう。変に私が彼を求めているのに、その彼が求めない…前の正反対のような状態。
せっかくお風呂上がりに沖縄の最終日に着てたえっちなやつ着てんだけれどなぁー……。着替える時だって先に出ててって浴室から追い出されたし…。虚しく変態的な下着を着ていくのって哀れだと思ったよ?浴室ではひとり声を殺して盛り上がってたみたいだし。
……魅力が無いとか…かな。私は特段可愛いってわけじゃないし。
ふふ、と背後で少し眠たそうな声で笑ってる悟。
ひとりでは出来るけれど私とは出来ないって事なのかな。
まさかとは思うけれど、本当に他に好きな人が現れて浮気とかしていて、その人にしか反応しない、とか。
ゆっくりとした動きですりすりとする悟がピタリと動きを止め、もぞ…、と少し体を起こす。被っていた掛け布団が持ち上がって少しだけ冷えた空気が寝間着から感じた。
「あれ、寝てる?……あ、起きてるね。……もー、起きてるなら返事してよねー!ぷんぷんっ」
背後でベッドにぼふっ!と倒れこみ、片手がずれた布団を私に掛け直してく。面倒見の良さは変わらず、というかこういう所からは怪しさなんか見えなくて、もしも浮気してるっていうならどれだけ演技がうまいって話なんだけど。
私が疑ってるのを知ることもない悟は寝ていないと分かると話の続きをする。それは一方的じゃなくて返事が返ってくるように疑問形で。