第3章 呪術を使いこなす事
『私、しばらくここに居るって事は仕事にも行けないって事?今日は有給当てたから休みにしてもらったんだけれど』
「あー、ウン。やめちゃえヴァ?あのホムセン、人間よりキミに引かれてやってくる呪いの訪問数多いもん」
テキトー過ぎるあしらい方をしたせいか、かなり拗ねているなぁ。
なんか気分を上げられて、かつ調子乗らない事ってあったっけ、と真後ろの部屋を思い出す。
『そうだ、悟。しばらく過ごせるお部屋、有難うね。さっき見たら快適そうだったよー。センスが良いね』
拗ねた悟はいつもの悟に戻る、形状記憶が作用しているみたいだ。
「そうだろそうだろ!?僕も隣時々使ってるから訪問するね、合鍵作ってあるし」
『前言撤回、有り難くねぇわっ!合鍵捨てろよー?』
ご機嫌な悟に、私は腕を組んで下から睨む。効果があるのか分からないけれど、今の所効果は見られない。
私達のやりとりを間近で見ている七海。
「ハルカさん、五条さんに餌を与えないで下さい、調子に乗りますので」
サラリと言う所、後輩というだけあって扱いに慣れているんだろうな、と思う。
ははは…と苦笑いして私は七海に頷いた。
萎んだ悟が急激に元気になったのを見て、私は軽い鞄を持ちこのまま3人は移動用の乗用車のある駐車場へと移動する事となった。
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七海が運転し、その横である助手席に悟。私は後部座席にと座っている。帰りは荷物を積むから後部座席って事で。
その真っ黒い高級車に乗って、向かう先は私の自宅。
走行中、七海は前方を見ながら時折ルームミラー越しで会話に参加をしているのだけれど。
「ねえねえハルカ、荷物取りと任務って言ったけどさー…先に謝っとくね?」
『え?何かやらかす予定で?』
助手席のアイマスクの男は横顔をこちらに見せてにこにこしている。謝るという態度では無い。
通常から失礼な事をしてなんとも思ってなさそうな男が謝るという事はよほどの事だと見た。
「最悪、家ちょっと破壊するかもー」
『破壊にちょっともへったくれもないよ!?』
私だけじゃなくて父親も住んでいる家。そして時々帰ってくる兄貴の実家。
その帰る家が破壊されたら困る。
謝るとかそういう次元じゃない、冗談じゃ済まないでしょ…。私は焦った。