第18章 美術品のように愛でないで
161.
高専のビーチバレー試合会場()から随分と離れてしまったけれど、のらりくらり躱され続けて私はまだ獲物である悟を捕まえられていない。
向こうから私が見える位置に隠れてるんだろうけれど……、視覚に上手く入らない立ち位置に居る。FPS系上手かったっけ、悟…?
…と立ち止まり、私は自身の両膝に手を着いて呼吸を整えた。硬い土じゃないから砂で体力は持ってかれるし、今が一番熱い時間帯だし……公然でのセクハラで苛ついてたってのもあって頭に血が上り、余計に暑くなるわっ!
『……チッ、んの野郎……どこ行きやがった?』
波打ち際から階段の続く少し高台となってる駐車場。その間の浜辺を右から左、そして左から右へと視線を移す。一般人の皆が楽しんでる中にあの白髪を探しながら。
……ウォーリーよりは難易度低いはずなんだけど。じわ、と吹き出る額の汗を手首で拭って、足元を見る。サンダル履きの足の指の間に入った砂が不快だけれど、気にしたら負けだ負け。
それにしても、ほんっと……あっついから悟を早めに回収して天地反転した姿にしてやりたいんだけれど……(※筋肉バスター)
「もしもーし?」
男の声、悟ではない。足元に目の前で止まるややガニ股の焼けた足。顔を上げると良く日に焼けた人が立ってる。いかにも海の男です!という印象。
にこ、と笑うと白い歯が見えて好印象を与えてくる。
「おねーさん、誰か探してる?」
白髪のウォーリーを探す為に走り回って乱れていた呼吸も整ったし、と私は体を起こし腰に片手を当てた。
『はい、そうなんですけど。長身でー…髪が白い男の人見かけませんでした?』
この浜辺で服装などの特徴はあまり当てにならないんだけど。青い水着くらいで、上は素肌の悟。海じゃなかったら、もっと特徴を上げられた。ここはだいたい肌の露出度が高いから人探しは困難なはずで。
目の前の海の男は自身の首をぽり、と掻きながら考えてる。
「んー?記憶にないかなー。そんな髪が白いって特徴ある人居たら絶対に記憶に残ると思うんだけれど。あっ、じゃあさ!おねーさん、俺と一緒に探す?俺さ、先にダチ帰っちゃってフリーだし!手伝うよ?」