第18章 美術品のように愛でないで
『口がよお回りますねえ……辞世の句でも読む?俳句を読め、今からイヤーッ!のち、ナムアミダブツ!してやっから』
具体的には肉体的は無理として。精神攻撃をかますんだけれど。
ずんずんと近付けはハンミョウのようにかさかさ、と逃げては振り返る悟。はっきり言って余裕を見せてるのがまた絶対に技をキメてやるって気にさせる。
「怒った?怒った?」
『処す……具体的には公然でのキン肉バスターを掛けた後記念撮影してやる。恥ずかしさと苦痛に悶絶し顔を歪ませるが良い…。
すみません私、所用のため抜けますんで……』
人数的にも丁度良いはず。向こうはパンダも抜けてるんだし、審判もパンダがやれるはず。
早足からちょっと小走りになってきた悟。その悟をシータを追い詰めるムスカの如く私は速歩きで追いながら。
試合を始めようとする皆を振り返れば「悟をシメるの頑張れよー」…と応援する真希や、手を振る野薔薇に軽く手を振り、本格的に走って悟を追いかけ始めた。私が走れば悟も走る、ただ余裕さは持ち合わせたままに。
流石、早い早い。余裕そうに振り返ってくる。口を尖らせ、ピュウ!と鳴らして。
「ハルカのおっぱいすっごいねー!あー、いー揺れっぷりだぁ!でもティーンズには刺激強すぎるかなっ?
あんまりそんなに激しく揺らすと婆チャンになった時垂れるよー?」
『じゃあ歩けや!走らざる負えないこの状況を止めろや!』
揺らさずに走れないんだよっ!と人の多くなってきた砂浜で目立つ悟を追いかけ続ける。
「おーこわっ捕まりたくないねー…けど、敢えて僕は言うよ?こんな状況だからこそのロマン!
僕を捕まえてご覧なさーい!」
『いい加減にしろー?こいてるねー、この28歳児めっ!』
人払いも無くなり一般客の多くなってきた、午後の砂浜。
ビーチパラソルや簡易テントなどを上手く使って身を隠しながら悟は私から逃げ続けてる。
絶対に捕まえてやる……捕まえて技を掛けてやる…っ!と私はひたすらに長身の白髪男を追いかけた。