第18章 美術品のように愛でないで
「イエーイ!」
テンションのノッてきた虎杖が近くに居た悟にハイタッチをした。そんな事をするからテンションが感染ったのか、悟がほいほい一年コートにスキップしつつやって来て、顔の高さで両手を上げ野薔薇の元に行く。
「イエーイ!」
「イエーイ!」
パン、とハイタッチをして、悟は伏黒の元へと駆けていく。
そうだと思ってました、と言わんばかりに飼い主にちょっかいを出されてめちゃくちゃ嫌な顔をする猫のような表情の伏黒。分かるよ、悟のウザ絡みだしね……。この後私が控えてますね…。
「イエー、ほら、テンション上げてー?めぐみぃ…ホラッ、イエーイ!」
降ろしてた手を悟自身に上げさせてからの疑似ハイタッチを終えてホイホイとこちらにやって来る。ちょっとアルマゲドンのテーマをハミングするんじゃあない。どっからの帰還だよ…。
しょうがないなー、ちゃんと付き合ってやればさっさと終わるからねー…。やれやれ、と肩の位置程で手を両手のひらを構えていると、にこにこと楽しそうな悟がちょっぴり屈んだ。
『……なんで屈んだー?』
「イエーイ!」
悟の両手は私の手ではなく、両手の指先で下から持ち上げていくのは胸。水着とそれを透かして羽織るシースル状の生地越しの公然セクハラだった。
『は?』
「……は?警察呼ぶか?」
「節子それハイタッチやない、パイタッチやっ!ナンチャッテ!」
悟のどうでも良い戯言なんて耳に入らん。
思わず漏れた私の疑問に、野薔薇が提案するピーポ君案件。確実にアウトです、言い逃れの出来ない、複数人の目撃者。流石に空気も変わってしまってる、そういう空気読めない所やぞ?案件。
……なーにがイエーイ、じゃ!硬直からの怒り。キッ、と睨めば私からササッ、とステップを踏んで距離を取った悟。
まるで錬金術師界の筋肉美を語るアームストロング少佐の華麗なるステップの如く。
『……処す、ぜってえ処す…』
「ハルカ、顔、顔やばいどっかにカチコミしに行くみたいな顔してる」
野薔薇に言われて片手で顔に触れる。でも今、にこやかに出来るか?という問題。
ボールは…狗巻持ってるし、ちょっと私は抜けようか、この場から。
ズンズンと悟方面に足を進める。
「うわ、エボシとサンの戦いに割り込むアシタカみたいになってんですけどー!」