第18章 美術品のように愛でないで
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さあ、帳が消えて海岸沿いが日光に照らされれば、呪術師の出番は終了、高専関係者の立入禁止のバリケードや警備も解除されて観光客もぼちぼち戻ってきはじめて。ついにお楽しみの自由行動の時間がやってきた。
そんな自由を獲得した私達生徒勢。一箇所に集まり、虎杖の提案で始まるのは一年と二年のビーチバレー対抗戦。ボールについては悟が用意をしていた。まあ、ボールの他にも小さな子ども向けの砂遊びセットとか(10歳以下が対象年齢と思われる、ビビッドカラーのやつ…)
……そんなに荷物持ってきてなかったはずなのに、一体どこから取り出してんだ?ドラえもんのような不思議さを感じながらもチームごとに左右に別れていく。
人数も丁度割れる4人ずつ。そして悟は審判という立ち位置で準備の良すぎるホイッスルまで首に下げている。悟の薄手の上着は帳も上がったし……と返そうにも、「一般人が戻って来てるじゃん?他の男に見られないように着てなよ」と私が羽織ったまま。
私よりも悟の姿を見た女の子が指差してキャッキャしてる方は問題じゃないのか、と私はちょっぴり面白くないけれど。
「じゃあみんなー!準備は良いね?始めるよー!」
元気な悟の掛け声。にこにこと楽しそうな彼は首に下げていたホイッスルと手に取り咥えて、そのままピーッ!という音を鳴らす。
虎杖から空気のたっぷり入ったボールがぽんっ!と跳ね上がった。
「俺んとこ来たから行くぞー」
虎杖が打ち出したボールは二年チームのパンダ方向へと向かってる。
「運動に全振りよねー、虎杖って」
「え、釘崎俺のことディスってる?脳筋って言いたいの?」
悲しい表情の虎杖。伏黒がそんな虎杖を見てはあ、とため息を吐き構えた状態でフォローに回った。
「褒めてんだろ」
「アッ褒めてたの?」
『褒めてねえだろ?』
「褒めてないわよ…」
微妙な空気になる一年のコート(という領域になった砂浜)
一方、虎杖の打ち出したボールが向かうコートでは迎え撃つ準備をしてる先輩たち。
「パンダ、爪気をつけろよ!」
「しゃけ、高菜!」
「うん、頑張ってね!一応爪が当たったとしても予備が2つあるって言ってたし……大丈夫だよ!」