第18章 美術品のように愛でないで
急いで海から背後を振り返る。最悪の場合は呪いによる攻撃。けれどもその急なスキンシップはいつもの香りと、上着から覗かせる素肌を見れば納得で。
「はい、じっとするー!暴れないでねー、」
瞬間的に悟に腹に手を回されたのか、と頭で理解した瞬間には浮遊感を感じて。
シュッ、とさっきまで悟が居た位置に私は抱えられたまま移動していた。私がさっきまで居た所はざぶん、と乾いている砂浜にまで波を寄せていて。
「今回祓い続けるのは海坊主が主体でーす。
……ちなみにさっきのハルカが使ったの、4回くらい呪術の使用で代償で死にまーす。身体に返ってくるから棘の呪言みたいなモンだよねー。
でもハルカを治す人は居ないし、獲物が前線に居るのはハードモードというかサバイバルモードレベルなのでここに待機してもらうよ。他の皆はしゃかりきに頑張って出陣してらっしゃい!」
アレ以来使っていなかったからか、それを見せる為に(再認識というか…)やらせたのかもしれない。
ふざけて足の小指ぶつける痛みや二日酔いを移す事はしたけれど、体のパーツがもげるような大きな事はしてなかった。
了解、とかはい!とか返事をして海辺に駆けて行く皆。私をラグビーボールのように小脇に抱えたまま「棘、ちょっと待って、」と悟は狗巻を呼び止めた。
「棘の場合は1、2回呪言を使う毎に戻っておいで。ハルカが治療するから。それまでは充分に引き寄せな」
「……しゃけ!」
頷き、そして遅れて駆け出していく狗巻。真希の目の前にザバァ、と3つのドーム状の呪いが出現を開始してる。
……こうして呼び寄せる囮の私と教師だからなのか、余裕すぎるからなのかのんびり見てる悟のふたりだけがこの浜辺に取り残されている、のは分かったけれど…っ!
『いい加減小脇に抱えるの止めて降ろしてくれない?』
見上げる悟はとても良い笑顔で各々に呪い…"海坊主"を祓うのをサングラス越しに眺めてる。
「んー?やだ。ハルカをこの状態から開放して、そのまま突撃しに行くって事はまず無いと思ってるよ?でもこうしているとオマエにゼロ距離だしね~?確保っていうより僕がただしたいってだけなの」
『だったら苦しい抱え方よりももうちょい違う抱え方を考えてさー…』
腹にグンッ!て来るし。