第18章 美術品のように愛でないで
「というわけで祓いまくってくださーい、多分ハルカ目掛けて来るからタワーディフェンスゲームだと思ってくださいねー、去年よりはバラけずにハルカ目掛けて一直線に来るから狙いやすいネ!みんな、お仕事ヨロー!」
はい、帳降ろしてー、とスーツ姿で暑そうな補助監督生に悟は降ろさせている。
青空からどぷっ、と闇が注がれていく光景。星のない夜が上からゆっくり降ってくる頭上。
『人をホイホイだとかTDだとか……っ!』
「だって本当じゃーん。あっ本格的に帳降りる前に。ハルカ、ちょっとここから10歩海へ進んでみて、なる早で」
文句まだあんだけれど、と不満の顔のままチッ、と舌打ちをして10歩海方向へと進む。ギリギリ波が来ない程度の浜辺で足を止めた。空が半分程夜に溶け、下半分は昼間のまま。海水が引く度にゆっくりと水分が抜けていく浜辺の上で寄せては返す波の動きから振り返った。
なんだ、ここで待機して呼び寄せるってか!……にしては近くない?待機というより普通に皆と同じく祓い続けるって事かな?そしたら何故私だけ……
にこっ!とした悟は指先で自身の足元を指してる。
足元…、と海の方を向いて目の前には何もないけれど足元に視線を落とした。
冷たいのにボッ、と昼間でも下から照らす炎。明かりは熱源がありそうでも私には熱く感じない。足首どころか関節より下を捕らえる大きな片手は水っぽく。
夜になる寸前、その波がドーム状にザアアー…と盛り上がって目の前に立ちふさがる。光る赤いつぶらな瞳が少し離れて着いていて、私を見下ろしていた。
大きすぎて"怒髪天"を使うというレベルじゃない……となると。
相手が私に触れているからというそのままの状態で私は"罰祟り"を発動した。移す負傷は致命傷…いや、死。首が綺麗に斬れるあの瞬間を。
瞬時に返ってくる代償は水着の状態ならありがたい。瞬時に発熱して、潮風が蒸発していった水分を拐う。
"ン、ぶっ…"
とても低い呻き声、そのドーム状の体から斜めにスライドする様に頭部が横へと滑り落ちて海へと落ちる。
ザブン、と音を立てて消えていく大きな呪い。波の音にしては随分と大きな音で盛り上がった海水が一気に重力のままに海面へと落ちる瞬間。腹部に後ろから何かが私を抱き寄せた。
『……っ』