第18章 美術品のように愛でないで
159.
停車をしてエンジンを切ると、すごい勢いで後部座席のドアが開かれて飛び出す生徒達。
海だーっ!…と、しゃけー!が合わさってはしゃいでる。
「もう停車してエンジン切ったなら僕を解放しても良いと思うんだけどー」
バックをする際にこっちに顔を近付けて来たのでぐりぐりと頬を押して回避して、パーキングに切り替えてもニヤつく気配を感じて頬を押して。そうやってるうちに後部座席の人達は弾丸のように飛び出していった車内、運転席の私と助手席の悟を残して。
「もたもたしてたら海が逃げちゃうゾ!」
『海は逃げねえよ?』
荷物を持って私達も皆の後を追う。
海については、買い物の場所によっては見る機会があっても、海水浴となるとなかなか行く事が出来ないんだよねえ……。私と悟はひと月前に海水浴をしてるけれども。まあ、海を目の前にすればはしゃぐよね、暑いし。
全員水着のみだったりその上に薄手の上着を羽織ったりして各々に涼し気な格好になっている。パンダはそのままなのだけれど…。
けれどもなーんか引っかかるな?と授業中の突然な海水浴に素直にはしゃげない。
『なんか…これ、ありますよね?』
はしゃぐ虎杖を眺めながら近くのパンダの側で見上げて質問する。
「ああ、妙だ」
「そうだな、まずこんなに暑いっていうのに海水浴場に私ら以外居ないという事と、高専の車が先回りして立入禁止にしてるって所だな。
というか、去年の私達も経験した……"アレ"だな」
パンダの影からやって来た、水着にパーカーを羽織った真希の言葉に、近くではしゃぐ皆が真顔になって振り返る。ここから一番遠い虎杖が遅れて振り返った。「どゆことデスカ!?」と。
目の前の皆が振り返った私達。そのパンダと真希が更に振り返った先、青の水着に白の薄手の上着を羽織る、サングラスをした悟。
サングラスをカチャ、と指先で掛け直しながら笑っていた。そんな悟を見て、呆れたような伏黒が一言。
「ただの海水浴じゃなくて、いつものなんですよね、先生」
「フフフ。勘の良い生徒は好きだよ……?」
「いや、別に俺は先生に好かれたくないです、これどうせ任務でしょう?」
そう、この感じはいつものやつ。どっからどう見ても任務兼レジャー。楽しみたいなら先にやることをしろってやつ。
虎杖と野薔薇は頭を抱えて、砂浜に膝からぼすっ、と崩れ落ちた。