第3章 呪術を使いこなす事
写真の状態になるまでを聞いて笑うだろうと思っていたら、まさかの反応で注意されてしまった。悟は少しばかり口元をへの字にし、"本気じゃなければ"を否定する。向こうだってきっと面白がってるんじゃないかって。根拠は無くても、彼女の態度は本気ではないと思っている所があった。
「まさか、だろ?むこうも僕が性格悪いって言ってくれてるしさぁ」
はあー…、と今日一番の大きなため息を吐いて硝子は悟を見上げた。
いつもの調子だな、こいつは。という具合で自身の髪を指先でいじる硝子。頭は良いハズだが、こういった事は初めてなのかも知れない。
「そういう…両者共にメリットが生まれるからって分かってる関係なら構わないけど。でも、五条であれ、その子であれどっちかが本気だったら最悪の結果を生み出すからな?
とくにあんたは28歳児、もう少し大人らしい振る舞いした方が良いんじゃないのか?」
硝子の口からは本当はもっと直球に言ってやりたかったが、きっとそれでも悟はアドバイスをへいへい、と言って聞いちゃくれないだろうし、自分のアドバイスで本気になった目の前の男がキスをされてぶっ倒れるような子に迫るようじゃ気が気じゃないだろう。
どっちにしても、この五条悟、好きな子にちょっかいを出す、恋を知らぬ小学生ばりな行動を起こしているという事を理解していない。
「ちゃんと守ってあげてるでしょー?ほら、僕は何だってこなしちゃうからさぁ」
「なんだかなぁ…」
28歳児という言葉に反論しない所、自分でも分かる所があるのかもしれない。
呆れる硝子の背後から悟は隙あり、と引き出しから菓子をひったくると、その場から走り去ってしまった。