第18章 美術品のように愛でないで
今までのだるさは吹っ飛んでしまったのか、野薔薇と虎杖が急に立ち上がり、椅子を膝裏で突き飛ばしたもんだから椅子が後ろに吹っ飛んでガタン!と倒れる。
『海かー!』
「朝のうち言って欲しかったんですけれど…」
「ん?恵水着用意してないの?大丈夫?僕の予備貸す?」
ちょっとだけノリ気じゃない伏黒に悟が聞くと伏黒は制止するように片手を軽く突き出した。
「いや、持ってきてますよ…ほら、日焼け止めとかあるじゃないですか」
「私のあるから特別に使わせてしんぜよう…!」
野薔薇と伏黒のやり取りを見つつ。
海かー!涼めるなー…、ちょっとだるい空気が吹っ飛んじゃった。私は沖縄で着たやつを持ってきたんだよね。今日の悟にしてはナイスだ、と悟にサムズアップしとく。悟が教卓に手をつきながら私の方に近付き、机を挟んだ前にやって来ると、両腕を乗せながらしゃがんだ。
悟が私を見上げる状態になってる。
「ハルカー、キミ、水着どんなの用意してるの?」
『ん?沖縄で着たやつだけれど?』
ビキニスタイルで、一応その上に体に巻き付けるシースルーのパレオも持って来てる。帽子とか持ってきてないけれど。日焼け止めは一緒に袋に用意してあるので完璧です。
それを聞いた悟は駄目です、と言ったので目をぱちくりと瞬いてしまった。
『えっどうして?なにか不都合が……?』
「駄目です。オマエ、水着はラッシュガードか、ダイバーが着るやつね。他の生徒が変な気起こしたらどうすんの?ただでさえヤバイのに他のやつが目を付けたら僕、全員の目を潰さなくちゃならないでしょー?」
目潰しすな、と軽く悟にチョップしといた。物騒やねん。
『……変な気起こさないでしょ、誰かさんじゃないんだし』
「いーや、起こすねっ!夏の暑さに当てられて余計に!だってさ、人妻というオプション付きよ?っべーよ!釘付けになったらどうすんの!?取られちゃう、僕のハルカが取られちゃう!」
しらー…っと見ているであろう3人。野薔薇が何か言いたそうなので沖縄の時の写真を携帯に表示させて野薔薇に向ける。
覗き込む野薔薇は、へーっ、と画面を見て私の顔へと視線を移した。