第18章 美術品のように愛でないで
「フゥハッハッハ…!」
「ハルカか家入さんとこで治療された方が良いと思いますよ、五条先生」
「夏の暑さにやられてるわね……」
『うん、重症だぁ…』
……伏黒に病気だと思われてらあ。でも多分私が治療しようと触れても治らないと思う…匙を投げるような、初期不具合だと思うなあ。
同じく下敷きをうちわ代わりに仰ぎだす野薔薇。悟はクククッ、と笑って教卓前に行き、両手で机をばんっ!と叩いた。
だらだらしている4人。別にビビることもビシッとするわけでもなく、変わらない態度を取り続けている。伏黒は静かにカバーを着けた本を読み、虎杖は体勢を変えて机に片腕を枕にして伏せ、私と野薔薇は下敷きで仰いでる。全力で椅子の背もたれに体重を預けながら。
「さあ、一年の生徒のみんなー!先生が前から用意しておきなって言ってた、"アレ"の出番だよっ」
さっきまでのだらだらはいずこ。めちゃくちゃ暑さ知らずの悟になってる。そのテンションがとても熱い。
……その"アレ"と言われて表情をトゲピー化した虎杖が首を傾げた。
「アレェ…?ってなんだっけ?」
「悠仁大丈夫?熱中症じゃない?熱中症だったらハルカに治して貰いつつ水分取りなよー?」
アレ、の出番。アレとは悟は以前から皆に水着を用意しとけと言っていた。「いつか出番あるから用意しとかないとカナシー事になるよー!」……と。
その存在を思い出した瞬間に、下敷きで仰ぐ手が止まる。私の手が止まるとダブルでビョンビョン言わせていた音が無くなったのでいつも間にか野薔薇も手を止めてたみたい。
「行くんか……ついに!」
『人工的なの?それとも自然な方?どっち?』
にこっ!と笑った悟。用意してたのか、くるんと巻いた筒状の紙を広げて、オリンピック会場の発表の如く私達に見せ付けた。
そこにはただ一文字。海と書かれたモノが。
「……海です」
「「イヤッホォォウ!!」」