第17章 幸福に生まれ変われ
「春日一族は女系での術式継承だからねー、ずっとそういう仕組みでやってるんだけれどホンットオマエそういう話知らないのね。
弁護士に後ほど手続きしろって言われるけど、僕がオマエ含めた春日家を買い上げた金額だけは回収しても良い?」
静かな土地でガガガ…と土を大きな螺旋状のドリルが地下から掘り出していく光景。
それを眺めながらにふと浮かんだ疑問。
『元は悟が私を守る目的で買ったんでしょ。いくらで買ってたの?』
んー、と数度瞬き少し言いにくそうに。
「価値が当人からしたら分かってなかったのか、予想外にちょっとだけ安く済んだんだけれど。1億です!これ、投げ売り状態かな?」
『いちおく…?安いって言葉じゃないでしょ、金銭感覚狂ってんの?』
普通のボンボンじゃないぞ、この人…!
そういえば私をリベルタから助け出す前に伊地知や七海を送り込んだ時、合わせて8千万をポンッ!と出したらしいし。祖母から受け継ぐって言ったってその億とかそういう金額は受け取れない。
というか、そういう高額なのを祖母は何に使うつもりだったんだろう?ブランドとかじゃないし…家の維持や着物とかかな…基本引きこもってたみたいだけれど。
私がちょっと引きつつ、『お返ししますねー…』と悟に返事をしといた。祖母が1億でも売らないって言ってたらもっと出してたのかな、この人は。それくらいに欲しかったのかな……私の事。
私に身を傾けるのを止めて、無邪気な子供のように質問をする悟。
「ねえ、お婆ちゃん喚ばないの?今こそ自分の終わりを感じる時じゃない?インタビューとかしたい、ハルカの頬にマイク擦り付けて」
……どこの弁護士のインタビューだよ、それ!
にっこにこな悟は悪びれる事なく面白そうだからって理由で提案してる。不謹慎であるけれど実際に私の中に祖母を呼べて、また祖母と暖かい思い出が無いから感情を込めて怒るほどもなく。
『悪趣味ー、そして言い方ー。自分が埋められていく様子をさ、見たい地産地消型サイコパスじゃないハズなんだけれど?』
少なくともそういう性癖は持ってないハズ。
悟はにこ、と笑った。