第17章 幸福に生まれ変われ
157.
「えー?春日家は土葬なんだ?ウェルダンに焼かないで?スーパーレアじゃん、完全に生じゃん、桜の木植えたらめっちゃ桜咲いちゃうじゃん」
『悟、言い方。いい加減覚えろ、デリカシー!』
ぼそっというレベルの声量じゃない一言を言い放った彼。周囲にペコペコお辞儀してそのスーツの袖を摘む。こっちが恥ずかしくなるわっ!
『ちょっと!』と悟に声を掛けると少し私側に身を屈めた悟は耳を向けた。
『龍太郎とか私の父ちゃんや兄貴なら分かるけれど、あまり関わらない人とか居るでしょ!五条悟を知らない人からしたらヤバイ人認定だよっ!』
「んー?分家の人なら僕を良く知ってるし僕も知ってるよ?元はといえば龍太郎の本当の血の繋がった家族だし、僕が冥婚した相手のご両親だぜ?」
目をぱちくりしながら「この辺り言わなかったっけ?」と言われて固まる。世界が狭すぎる問題。玉砂利の庭で墓が並ぶ前、黒尽くめな私達の前で祖母の墓石の枠内に割と小振りな重機で深く深く穴が掘られていく光景。
特殊なのは分かる。
私の一族は犠牲者が多く、皆が横向きで埋葬となると敷地をもっと広げなくちゃいけなくなる。だから棺桶を縦に入れるらしい。領域に先祖が現れる条件として埋葬方法なんて関係ないと思うんだけれど……。
母は火葬で、骨を父がこっちに持ってきたって話を聞いてるし。領域内では元気そうに先代に喧嘩売ってたし…。
悟は私側に身を傾けながら。ここにやって来ている分家の夫婦を見てクククッと小さく笑った、意地悪そうに。
「多分、分家の人らこの地や財産も狙ってるよねー。龍太郎から毟ろうにも五条家で買い取った後だし、土地は既に五条家の物。お買い上げのお金に関しては養子ではなく当主であるハルカに引き継がれる。あの分家の人達にはなんも入らないってワケ!当てにしてたものが外れて葬儀らしく寂しげな背中してんねー」
そのデリカシーの無い発言は分家の人の思い込みっていうか皮算用というか。夫婦の背を見ればしょんぼりしていた。別に訂正しなくても良いや、と思いつつ。『ふーん?』と悟の話を聞いてちょっとだけラグタイムが流れる。
『………えっ、そうなの?』