第17章 幸福に生まれ変われ
とてもささやかな通夜と葬式。祖母は縛りの為にあまり人と関わらなかった。喪主は龍太郎となっている。本来ならばあの家は誰が存続するかとかも話し合っただろうけれど、悟が祖母が生前のうちに買っているから五条の所有物。祖母が殺されてからは一応、五条家の者が数名送り込まれている。龍太郎も大変だろうって悟の考えがあってこそ。
私を抱き寄せる手を離して、床においた荷物を少し屈んで拾った悟。
「しょうがないなー、僕の奥さんは恥ずかしがり屋なんだから。僕は見せ付けたって良いのに~……ほら、京都に向かうよ。忘れ物はない?」
『ん、忘れ物は無いかな~…じゃあ行こっか』
京都から東京まで戻るのは面倒くさいからしっかりと準備はしたし。
部屋に鍵を掛けたらそのまま、京都へと向かった。
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「お元気そうで何よりです」
『うん、龍太郎と…マリア、さんも無事で』
春日家の本家にやって来て少ない来客に向けた準備をする為に。現在は私しか居ない、本家の血を継いでる術者。祖母が死んでも悲しいって気持ちがあまり無かった。
にこやかに迎えるふたりと、少し小走りでやって来た、悟の家の使いが数名。
「悟様、奥様、」
着物なんだなあ、と見てるだけでこっちが背筋を良くしてしまいそう。慣れない奥様呼びに照れかけた顔を必死に真面目であろうと引き締める。
「あーうん、オマエ達も元気そうだね。こっちの方変わりない?」
「ええ、特には…」
「そっか!……うん、ハルカの事もあるし、本当に身内だけで…。禪院家の者は来てないね?連絡も来てない?」
…?なんで敵視してるだろう春日家にわざわざ来るワケ?と見上げると頭にぽすっ、と手の平が載せられてわしわしと撫でる。何故今撫でた。
使いの女性は頷く。それを見た悟はよし、と零した。
「じゃあヨミさんを送る準備とお客さんを迎える準備するよ!といってもこっちは死んだ一族を降ろせるハルカが居るからねー、死んでも生きてるようなモン、身内側が悲しむ所じゃないんだけど。
あっ!僕良い事思いついた!ハルカさー、お婆ちゃんの遺体の所行って"髪降ろし"してみて?それでお婆ちゃんがどういう反応するか見てみようぜ!幽体離脱~とかさあ!」
葬儀にあるまじき爆裂スマイルの悟。いつものデリカシーのない、そういう所な五条悟モードだ。