第17章 幸福に生まれ変われ
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今日は本当ならば学校だった。けれども休まないといけない事情が私達にはあった。
実家から持ってきた喪服。この真っ黒い服に身を包むのは母の時以来だな、と部屋で着替えた。軽めの荷物を持ち、悟がネクタイを締めている姿をジッーと眺める。なんとなく新鮮っていうか、いつもと同じ黒い服と白髪のコンビネーション。けれどもスーツって所がポイントが高くて、口を開いてなくただ黙って身だしなみを整える姿がとても格好良く見えるけれども、なーんか引っかかる。記者会見でも開くんかね?っていう意味で。
すると視線を感じた悟がネクタイから手を離し、サングラスをスチャ、と掛けるとサングラスの奥の瞳が私へ向けられた。
「オマエは一応学生じゃん?学生は制服でも良いって事になってるよね、高専の服は基本が黒であるし。ハルカは制服じゃなくて実家から持ってきたそっち着るワケ?」
確かに一部装飾以外は(フードの部分は白だけれど)黒。それは学生とはいっても未成年ならありえるだろうけどさ、私は社会人でもある。葬儀に着る礼服くらいは持ってるからそっちを着れば良い。
ぶっちゃけ、悟がカスタマイズしたのはブレザーのセーラー服版みたいなちょっと丈が短く、スカート部分も短いモノ。いくらストッキングを履くっていってもさあ。悟の性癖、どうなってんだ?
鼻でふん、と笑いながら自身の黒尽くめな服の上から、胸に手を当てた。
『どっかの誰かさんのカスタムがさ、学生らしさを消しててね。流石に攻めた制服を着てお通夜と葬式には行けないかなー』
「アダルティーに攻めた顧客満足度100%カスタマイズだもんねっ!」
顧客ひとりしかいねえだろ?しかもその満足って医務室の隣の個室での制服を着た状態での行為とかじゃん?
そういう所だぞ?と、喪服を着る悟を文句を詰め込んだ視線で覗き込む。
普段が普段だから新鮮。サングラスを掛け、スーツを着た悟がいつにも増して格好良いのがちょっとむかつく。
『はー…、しかし馬子にも衣装ってこういう事だよね。黙ってれば普段と見違えてすごーく格好良いんだけれど…』
「ん?オマエにそう言われると嬉しいけれど何?その"格好良いんだけれど"の後に何が続くの?黙るって何さ?口を開けても閉じても僕は格好良い事で不動の一位、DHCばりに総ナメの五条悟なんですけれど?」