第17章 幸福に生まれ変われ
「ほんと?ヤマダよりも五条悟の事をちゃんとハルカは愛してくれてる?……嘘だったら許さないからな?絶対に」
『嘘なワケないじゃん、私は悟だけを愛してるよ?』
目の前の悟がじっと私の瞳を真剣な顔で数秒覗き込んで「本当?」と呟く。
燃えるような感情で迫る割にはあまりにも優しすぎる、唇を優しく塞ぐキスをして両手の拘束をぱっ!と離した。
さっきまでの嫉妬はどこへやら。不安そうだった表情が急ににこにことした表情に変わっていて、その裏が無さそうな笑顔が逆に怖いと感じてしまう私がいた。
「……なーんてねっ!こういう僕もたまには良いでしょ?モテる男も嫁には執着をするってねっ!」
『はぁ?』
私から離れて室内に少し足を運んで振り返る悟。まあこのテンションはさ…いつもの悟だけれど。
押さえつけられた自分の右手を見る。ほんのりと手の跡や壁に押さえつけた跡が赤くなってる。きっと制服で見えない二の腕も痕が残ってるはず。こんな体に残すような事を冗談でつける訳が無かった。悟は普通の状態だったら傷付ける事のない人……大切な人はとても優しく、文字通り"大切"にしてくれる人間なのだと知っているから。
両手を下ろしてその冗談と言い張る悟を見た。
『……冗談、じゃなくてさっきのは本気だったでしょ?』
悟は数歩進んだ所で立ち止まってん?と首を傾げ、振り返った。にこにこした表情で、さっきの悟と別人みたいで…。
「そこは冗談にしとこーぜ?だって本気で迫ったら……オマエをこれ以上傷付けるし、怯えさせるし。僕はさ、ハルカに恐れられたりして離れられたくないの。
だったらさっきまでのは僕のほんの悪戯心。
そうしといてよ、ハルカ……」