第17章 幸福に生まれ変われ
「本当?僕に言えないってだけで、黙って付き合ったりこっそり会ってたりしてない?今も関係続いてたりはしないよな?」
『心配しすぎ。今日、私の後に辞めたとかそういう事初めて知ったんだし、その会社以降にヤマダさんとは何の関係も無いよ』
本当に何もないし、ヤマダについての私生活だとか何も知らない。連絡先だって知らないのにどうしろって話。
右手でそっと、左腕を掴む悟の手に触れて外そうとしたらその右手首を掴んで壁に押し付ける。
困惑したような悟の眉。
「……は?本当か、それは?嘘ついてるワケじゃねえよな?」
『本当、だって。手、痛いんだけれど、悟…っ』
制服のままの状態。着替えとかしてないけれど…、少し怒りながら玄関でするのかな。汚れるし、皺が着くの嫌なんだけれど。変な汗もかいたからお風呂にも浸かりたいし。
ぎゅう、と強く押し付けられた腕と手首。目の前の悟は少し顔を近付けた。
「オマエはさ、俺のモノなワケ。絶対に他の男の元には行かせないからな?そこ、ちゃんと頭で理解しろよ」
『何?悟は私が浮気しようとしてるって思ってるの?』
「………、」
骨が軋むような痛み。血が通って無いんじゃないかってくらいに、押さえつけられた部分が鈍く感じる。
「……愛してるって言って」
『は?』
少し不安そうな表情の悟が、目を伏せる。そして青い瞳が見えたと思ったらわずかに上目遣いをして私の顔を覗き込んだ。
「オマエの口から聞きたい。僕の事、愛してるって言ってくれない?」
『……愛してるよ、悟』
簡単な事だけれど、その言葉を言えばまだ不安そうな表情の悟は少し間を置いて、眉をハの字にしてる。両手を拘束する力は緩むことはなく、そのまま私は壁の硬さを背や腕で実感してる。