第17章 幸福に生まれ変われ
よし、このままそうですね!という返事&そのリングはもしかしてって食いつくだろ。
視線が私の顔から彼女の手間に伸ばした手にいってる。潤み始めていた瞳が瞼をより広げ、私の顔を見つめてる。よし。
「辞めるにはここ、3ヶ月前にって話……、
あの、みたらいさん?もしかして…」
はい、もしかして。
ちょっとだけ明るい顔になったカワカミ。口元に笑みを浮かべる彼女は両手を私の前で合わせた。
「まさか、この指輪は…!みたらいさんが辞めた後に後を追うように辞めた…みたらいさんが好きだったヤマダさんと…?」
『ぶっ、……いや、そーじゃなくて!』
おっとそれは予想外。そこに触れられるとは考えてなかった。
物陰に隠れて顔を出してるふたりの方向をそっと見る。そこには悟を引き気味に見る伏黒と、悟周辺にドス黒い呪力にも似た何か。あれ、チャリオッツ・レクイエムかな……?訂正しないと酷いことになりそうなんですけれど。
私はカワカミの言葉を否定するように、急いで首を振った。
『ち、違うよ?名字はみたらいからご…ご。五条に変わり…マシタ』
「え、そうなんですか…。じゃあその結婚した人もヤマダさんみたいなタイプなんです?ヤマダさんのように皆に頼られるようなリーダーシップが取れて誠実な、」
『あーっと!そろそろ点検の時間が入っちゃうかなー?パソコン、シャットダウンして帰ろう?今度食事でもした時に話聞くよ?ほら、メンテが本格的に入る前にさ!社員残ってるってバレたら報告されちゃうかもだし!私、カワカミさんの事下まで送ってくからっ!』
不審に思われながらシャットダウンや帰り支度するカワカミの側で、携帯でダダダダと早く打ち込む。
"下まで送ってく、すぐに上がるから特に悟は姿を見せないで!"と。
フロアの中、爪をチャッチャッチャ、と慣らしながら伏黒の玉犬が私の元にやって来た。もうここには呪いは居ない。褒めて!と降ろした片手にすり寄るのでカワカミが見ていない隙に撫でる。しっぽを振って十分な働きをした玉犬は私の側でしゃがんで待機をした。
ブブブ、と片手に握る携帯が震える。すぐに返ってきた悟からの返事。