第17章 幸福に生まれ変われ
「みたらいさん…、おっしゃる通り通達されてましたよ。でも…、」
『お局様?常務?ハゲのタナカ?』
「常務は地方へ飛ばされまして、タナカさんが今じゃあ常務になってますよ」
うわっ、まじかー、と当時のやりとりしていると携帯のバイプレーション。お喋りはそこまでとか急かしてる感じかな?と画面を確認すれば悟からメッセージが入ってる。
ええと…、通知からしっかりとアプリに入って見る。
"今のお前はみたらいじゃない。五条でしょ!そこ訂正なさい"
……。
「……常務、ですよ、通達があった後に会議に間に合わせる為に今日一日で全部まとめろって…っ!さっきまで明るかったのに外は曇天、暗くなったから他の人に見つからないようにこう作業してたらみたらいさんに見付かっちゃうし……常務には、言わないで下さいね?」
『言うわけないよ。しかし昔と変わらず猛威を振るってんだね、あのハゲは…』
ちら、と少し離れたふたりを見る。悟が片手に持った携帯を指しその後こっちを指してる。
ブブブ、ブブブと連続的に震える携帯。それは次々とやって来るメッセージの数を表してる。
"訂正"
"はやく"
"お前はみたらいハルカじゃなくて五条ハルカなの、僕の奥さんなの"
"ほらはやくして"
"奥さーん、見てますぅ??旦那さんからのメッセージ見てますぅ??"
"ちゃんと主張して?じゃないと今すぐにそっちに行くよ"
"「ハルカの夫の五条悟です、妻がかつてこの会社でお世話になってたみたいですね」とか言っちゃうよ?"
"イマカラ、ソッチニ行クゼ!"
……最後、シザーマンか??
…それは止めて欲しいわ。というか上司じゃなくてこの子は同僚だっつってんでしょうに!
仕方ないので"訂正しとくから来ないで"と返事を返して未だこの企業の黒さに耐え続ける彼女の話に耳を傾ける。
「みたらいさんが辞めたタイミングで私もあの時に辞めておけば良かった……っ!」
今にも飛び出して来そうな悟の気配を感じ、また室内の呪いを噛み、引き裂いていく玉犬、そして目の前では泣きそうになってるカワカミ。情報量の多い中で左手をばっ!と彼女の前に出し、とりあえず彼女の言葉を止める。
『辞めるのはいつでも辞められるから…っ!なんならすぐにでも辞められるし、ねっ?』