第17章 幸福に生まれ変われ
というか、今も昔もブラックに身を置くのは変わらないような気がする。さっき悟も呪術師もブラックだって言ってたし。
文句言ってやりたいな、と言葉をまとめようとする私の背を悟が押す。いや、伏黒も押してる。後ろを振り返りつつ焦りながら待って!と小声で反論した。
「呪術師なのは伏せて行って来いよ」
「そうそう、システムエンジニアだとかそういった理由つけてさ。室内にも呪いは居る、そこは恵の玉犬に任せておきな。さ、行った行った!ハイヨー、シルバー!」
『馬じゃねえよー?あっ、だから押すなっちゅーの!』
押すふたりと違い私の隣でお座りしてしっぽを振る玉犬。舌を出し、へっへっへっ、と仕事を振られて、ついでに玉犬自身もしっぽを振って私が室内に進むのを待っている。押したり引っ張ったりしない玉犬が愛らしい。
遠距離ってか私や伏黒の指示なくとも勝手に噛みつきに行ってくれるはず……。その頼れる玉犬のふわふわな体毛をもふん!と撫で、一度ふたりに片手を上げてからその室内にゆっくりと入っていく。玉犬は私の直ぐ側を通って室内に居る呪いに早速飛びついていくのが見えた。呪いは私に目を向けたままに色んな方向から向かってきていた。今は祓う動作をすると彼女に見られた瞬間に変人確定だから、玉犬頼り…がんばれ!
呪いを祓う行為も見えず、聞こえなくても私の靴の音が非術者の彼女には聞こえたようでデスクに落としていた視線をばっ!と上げる。
「だっ、だだ…誰ですかっ!?」
びくっ、と立ち上がって警戒してる。
とりあえずは片手を上げて挨拶しておこうっと。
『現在管理会社に身を置いてるハルカです、久しぶり、カワカミさん。
今日、防犯システムのメンテナンス入るって通達されてなかった?』
それっぽい理由にはなったかな?と彼女の側に立つ。パソコンの画面には企画書のまとめがずらーっと打ち込まれていた。
基本、この子は振られた仕事を断る事がない。だから利用されている、今も昔も。きっとあの嫌な上司達に今日出勤してまでやれと言われたんだろうって安易に想像が出来た。
彼女はしょんぼりとした眉で少し俯いて、そのままゆっくり椅子に座って頷く。