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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第17章 幸福に生まれ変われ


154.

4階に上がりながら先頭を行く悟、そして伏黒の玉犬が呪いを祓っていく。笛吹き男のパレードの如く、のろのろと遅い足取りで物陰やら壁から私を目指して寄ってくる呪い達。奇妙な笑い声を発する呪霊もやってきた。それらを流れ作業のように通路からそれぞれの室内の呪い達を祓っていく悟と伏黒。
質はともかく量は多い。悟の言っていた適材適所とはまさに今の状況なんだな、と正しい導きに納得しながら3階から4階へと階段を登りきった。

『わぷっ、』

悟が立ち止まり、その背に顔面ダイブをした、なにさ、もう。急に止まるなよ…。
…って。

『……どしたの?』

一応、何があるか分からないから小声での質問。
伏黒も止まってる。男ふたりがぴたっ!と止まるもんだから先が見えない。ヤバイ呪霊でも居るのかな…。
悟が振り返り、口元に指を当て、シーッと声を潜めるように私に伝えてる。思わず口を抑えながらにふたりの側からその先の光景を覗き込んだ。

私の目に映るのは、どの階層も暗く非常灯程度しかなかった中で大きな部屋……企画部の室内。たくさんのデスクが並ぶ光景。そこでデスクライトの眩しい明かりとこちらがわを向き、けれども視線はパソコンに向いてる真剣な表情をする女。
目の前と手元を何度も確認しながら小さくタイプ音が聞こえる。メガネを掛けて気弱そうな見た目は昔と変わらない。昔は髪を結んでたけれど現在はショートヘアになってる。
悟がその女性を見ながら小さく呟いた。

「ハルカが言ってた通りだねー、やばくない?ブラックだからこうやって出勤してる人も居るんだねー……まあ呪術師も違いはないんだけれど」

その悟の肩に手を乗せてちょっと前のめりになるくらいにその光景をじっと見る。

『……あの子、知ってる。私と同期の子のカワカミさん』
「えっ…知り合いかよ!?」

驚いてるけれど声は控えめを通す伏黒。

「知り合いなら尚更、キミが帰してあげなよ。ブラック企業に勤めている気持ちが分かるのは、同じブラック企業に居たキミだけさっ!」

するっ、とアイマスクを片面持ち上げてばちこーん!と音が出そうなくらいにウインクをしていそいそとアイマスクを定位置に戻す。ウインクする為だけにアイマスクをズラすなっつーの。
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