第17章 幸福に生まれ変われ
「あーでもそれだと普通に水道工事やらガス管の点検だとか頼まれちゃうかっ!それらも出来ちゃうだろうね、だって僕天才だもーん!
やっぱ万屋っていったら万屋悟ちゃんって名称かなー、はははっ白い大きな犬も買わないとねっ!マスコット犬!恵ー、CMの際は玉犬貸してー!」
任務が始まったっていうのにのんきな悟。最強故の余裕なんだろうけれど。
ちら、と伏黒を見る。苛立ってるなあ、という表情の伏黒は悟を指差してる。言わずとも伝わるよ。
"あんたがなんとかしろ"と。ちょっと困った表情で返しながら、ゆっくりと首を縦に振った。
「ちょっとー、男子ぃー…と女子ぃー!ちゃんと僕の話聞いてる?
さっきからどったの?テンション低いねー。雑魚の呪いの時くらいはテンション上げて行こうよ。
はーい!アリーナ!二階席ー!」
『チッ…、今度からガムテープ持ってくるようにしよう、そうしよう。口を早く塞ぐべきな案件だったわ』
周囲を警戒しながら、伏黒は頷いて印を結ぶ。ぞくりとする感覚、ビルに入って早々に低級だとはいえ現れてる。視線があちらこちらから注がれてる感覚にぶるりとした。
「行け、"玉犬"……任務にテンションもなにもありませんよ、ちゃんとして下さい」
ぷく、と膨らむ悟は一度立ち止まる。
悟の側に寄る呪いが悟よりも視線は私に向いていて、ノールックで悟が祓ったらしい。雑巾を絞るようにねじ切れて消えていく。
「えー?ガムテームじゃなくって塞ぐんだったらハルカのお口でちゅう、で塞いで欲しいなっ!」
『……地べたにでもキスしてろ』
呆れたような視線を向ける伏黒。今日は朝からセクハラが多いからもうこの時点で疲れるわ、まったく。
ビルの中、社員が居ないせいか暗く、疎らな非常灯が頼りになってる。予想じゃ出社してる人居ると思ったけれど居ないのか……あの頃よりは少しはまともになったのかな。
低級の呪いをどんどん祓っていくのを見て、完全近距離型の私は見てるしかない。武器を編み出せばなんとか出来るけれど怒られるのは目に見えてるし。