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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第17章 幸福に生まれ変われ


153.

見上げたビルは1年と少し通ったあの時のまま。
地上8階建てのビル。そりゃあそうだ、何十年も昔ってわけじゃないのだし。それでも苛立ったあの日々が脳裏にこべりついてる。ごくり、と生唾を飲み込む。あの頃の同期や後輩、ちょっとだけ尊敬出来た先輩達は未だに居るんだろうか?それとも私みたいに抜け出せたんだろうか。淡い恋心を向けた人も居た、共に不満をぶつけながら語った人も居た。この芥通信本社の何もかも全てが憎いわけじゃないけれども。ちょっとした良い思い出さえも黒く塗りつぶす、呪いが学校並に発生する会社だ。ちょっとだけ足が重く感じて。

そんな古巣を見上げる私の肩に、肘を乗せた悟。振り向くと彼は口元がにこにこと笑ってる。
……呪術界もブラックなのは学生の段階で目に見えてるけれど、今私達が立つビルよりはマシ…だと思いたいなぁ。

「どう?キミの思い出の職場。懐かしい?」

『……ビルの爆破スイッチはどこに?』
「ねえよ。五条先生が呪物を設置するんであって建物は破壊はしないだろ。物騒な事言うなよ…」

解体したろうか?という気分の私に伏黒の正論が突き刺さる。
それでもここの嫌な連中は建物が無くなったとしても瓦礫の中でマジで仕事しかねない連中だ。私に出来ることはないから、まともな人はさっさと逃げ出していて欲しいもの。つまりは私の世話になった人達が現在、この会社に在職中で無いことを願うしか無い。

伊地知によって帳を降ろされているのを見上げながら人の気配の無いビルの入り口へと視線を下ろしていく。入り口前にはガードマンのみ。人の出入りはなく、いつもより正面の照明は控えめに着いてるくらいで。

「で、呪物はちゃんと持ってきてるんですか?」
「もちろん。今回は宿儺の指よりも小さいからねー、ちょちょいっと建物内に隠させて貰うよ!」

にこにこしながらポケットから小さな桐の箱をちらつかせる悟。それは文字のたくさん書かれた紙が十字に張られて厳重にされている。
それを私達に見せた後に悟は再びポケットにしまった。
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