第17章 幸福に生まれ変われ
「そういう意味の肉便器にしないで。というか女の子がそういう事言うんじゃありません。聖水とかマシュマロとかもっと夢のあるメルヒェンチックに言いなさい!」
……はあ?と言いながら肘で小突く。私は精霊とかじゃないし、アイドルでもないんですけれど。聖水とかなんだ、ヴァンパイアとかにぶっかけろってか?チッ、と舌打ちをして鏡越しに睨む。結構威圧感出るんだな、と自分の威嚇を確認しつつ鏡の悟と目が合った。
2秒ほど目が合ってたと思う。ちぇー、と文句を言いつつようやく離れた悟はその青い瞳を細めて笑った。
「じゃあ僕は朝飯作ってるよ、ハルカは制服への着替えもあるだろうからのんびり準備してな」
『……ありがと』
「いーえ。スパダリだもん、これくらい朝飯前…あっリアル朝飯前だね、ハハッ↑」
テッテーのマネしながら、キッチン方面に進む悟。
朝から優しくて甘くて、ちょっと賑やかで。こういう日常が幸せっていうんだなぁ……なんて。
そう思っていたんだけど。それは部屋だけに限定したいのが私の本音。朝食を摂って、洗濯物を干して……片付けを軽くしてから部屋を一緒に出て。任務に行く為の、高専内の駐車場へと一緒に向かうのだけれど。
ビル方面、商店街方面と、行き先ごとに車が分かれる。その車までの距離を……寮を出たその瞬間から上下黒のいつもの服にアイマスクとなった教師、五条先生という状態で私の背後から装備された。
部屋でさんざん甘やかしてあげたのにも関わらず、だ。この人ったら外でもイチャつこうと考えてる!
もしやこれ、呪われた装備では…?
五条悟という呪いの装備なんじゃあ…?特級呪術師兼特級呪物…?流石に皆の前でこれは無いわ、首に回された腕を掴んで離そうにも想像通り離れない。
『……なんだこの特級呪物は~?離れないんだけど?』
「そりゃあ僕の意志で離れたくないからね。てか何?特級呪物って。ドイヒー、その棘のある言い方で傷付いた僕のガラスのハートをこうやって埋ーめよっと!」
『や・め・ろ』