第17章 幸福に生まれ変われ
いや、取んないけれどさあ…(楽しみ?はどうなんだか)
素足でぺたぺたと洗面所に行けば、背後にくっついてくる謎の密着パーティー整列から離れた悟。しっかりと立って洗顔も歯磨きもしてるし、着替えやトイレにもひとりで行ったからもう大丈夫でしょ、と化粧品をしまった所で目の前の鏡に映る、るんるん気分の悟君。後ろからまた彼が装備される。
「おっまたー!ガチャーン、ガシャコーン、ブッピガン!」
『ロボットだったんかい』
なんで?なんでまたくっつくんだ?鏡に映る私は信じられないって表情をしてる。一方、彼は猫であればニャゴニャゴ言いながら顔を擦り付けて遊んで、撫でてアピールしてるかのように、さっきの続きをしてる。
……別に、嫌じゃないけれど。でもこっちは朝の支度ってのがある。使った化粧品を入れた棚を閉じ、またバックハグ中の悟の頭にぽふっ、と手を乗せた。
『あのー?悟?私今からトイレ行きたいんですけれど?』
「このままが良いーこのまま行こう?大丈夫、僕、鼻摘んでるからっ!」
何が大丈夫、だ!置いた手でぐいぐいと悟を引き剥がすように押すも、悟は意地になって離れない。鏡にちら、と映る悟はドヤ顔をしてた。クソッ、遅れてやって来た反抗期かー?
『よくねぇよ?さっき自分だけ先にトイレに入ってたじゃん、私もひとりで入りたいわけ。一緒に入ったとしても座ったら悟、大も小も掛かる第二の便器になるよ』
例え離れたとしても、だ。見てる前で出るもんも引っ込むわ。
いくら同棲してるったって、恋人だとか夫婦だって相手の前で絞るのとか躊躇う、じゃないや。無理!
犬や猫だって用を足してる時にガン見してるとすごく情けない顔で、悲しそうな鳴き声出すじゃん。あの状態にされたくないからひとりで入りたい、ひとり専用の場所…だから個室っていうの!
朝の忙しい時にトイレのディフェンス入られたらそりゃあガチトーンの説教もちょいキレ気味になるわけで。