第17章 幸福に生まれ変われ
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充電器に差したままの携帯のアラームが鳴って、ゆっくりとベッドの中から手を伸ばす。まだねむーい……。けれども起きないと。今日は確か任務だった。アラームを止めて、少し乱暴にゴト、と携帯を置き、伸ばしてた手を引っ込める。暑い季節にあった、薄めの布団の中は体温でむわぁ、と温まってる。
横向きになってる体、眠たい目を開けるのが億劫でせっかく起きたけれども早くも二度寝したい気分なんですが。はぁー…と、ため息をはいた。起きたいんだよ、体を起こしたいんだけれど出来ない状況なんだよね。
私の背後にぴったりとくっついて片腕で引き寄せる様に抱きつき、足も絡む状態の悟。あんなにアラームがうるさく鳴ってもぴくりとも起きず、服の無い素肌の部分……首や背に定期的な呼吸を感じる。
ここんところっていうか、沖縄から帰って倒れて起きた日、そしてその翌日。あんなにも毎日身体を求めてくる悟が手を出してこない。というか誘わない。これは持て余す程のあの性欲よりも甘えたいモードが上回った結果のコアラ状態なのか?
一緒にお風呂に入った時もぎゅっと抱きしめるくらいで……あまり胸を揉んだり、下半身に手を伸ばすことも無かったし。
自分の背中側の頭部に手を伸ばして優しくわしわしと撫でると空いた腕が布団と体の下から侵攻してきて両腕での抱きしめへと変わり、また抱きしめる強さが僅かに上がった。
……倒れた個室でのあの骨が軋むような痛みはないけれど。
「んっ……、」
……眠る子供が起きたくなくてぐずってるみたい。
頭から、前に回されてる腕に触れて悟を揺する。
『悟、朝なんだけれど。離れてくれないと私、起きらんない』
「んー…もう朝ぁ?オマエと離れんのやだ、このままくっついてく。僕を体の一部だと思って行動して」
眠そうかつ、甘えた声。
正気か?まあでも……しょうがないな、なんてちょっと笑いつつベッドから起きようとすると、悟自身ものそのそと起きる仕草を後ろでしてる。本当にくっついてくるのか…。
立ち上がって早々にすりすりと背後から首筋に頬擦りをしてる。くすぐたい、特に悟の髪が肌を掠めていく時が小動物の戯れみたいでくすぐったいんだけれど…っ!
『ふ、ふふっ、やめてよ、そういうの。くすぐったいんだけど』
「……やー。いい匂いするし、柔らかいんだもん。僕の楽しみを取らないで」