第17章 幸福に生まれ変われ
『今日っていうかすぐ終わっちゃいそうな量だね?』
「んー?そうね。恵達と外で合流する?」
柔らかい笑みを浮かべて、テキストを閉じないように大きな手で押さえる悟は私を見てる。私が言いたいのは皆を追いかける・合流って事じゃなくて。
『いや…、そういうんじゃなくって』
確かにさ、放課後に遊ぶっていうのは私も楽しかった記憶がある。ジャンクフード食べたり、ゲーセンに入り浸ったり。服を友達と見たり文具を仕入れに行く事も本屋に行くことも。
ちょっとだけ不思議そうな表情の悟。そして空いた片手で口元を隠し始めた。
「……もしかして、ハルカ…デートに誘ってくれてる?」
『それでもなくて……
いや、ほんとごめん、デートを期待させてたっぽくて』
少し俯き見るからにしょんぼりしてる悟の肩に手を伸ばしてさする。外で夕飯しつつデートとかも良いけれどさ。
『この後、稽古に付き合ってよ、悟』
しょんぼりした顔を上げると、彼の顔(口元)は真顔だった。
「……やだ。
はーい、じゃあこのページの始めからねー!これは京都の旅館で起きた事件なんだけれど……って分かった!分かったからそんな目で僕を見ないで?」
稽古に誘った瞬間に真顔で断られて即補習が始まった。えっ…なんで?とテキストに視線を落としているであろう悟を覗き込めば結果的に稽古をしてもらえるようになったみたいだけれど。
ちょっと悟的には気分は乗らないみたいだったけど相手してもらえるのはありがたい。
……真面目に補習、受けよう。気分を切り替えて私は遅れていた分の補習を今回でなんとか終わらせる事が出来た。