第17章 幸福に生まれ変われ
『……何故?なんで私が詳しい事になってるの?』
またなんかのおふざけモードに入ったか?清掃員のゲームとか。その辺詳しくないんだけれど…とじっと見ていれば、へら、と口元が笑う悟。
「ん?キミが昔社員として働いてた所だよー、相当やばいね。ブラック企業界のトップクラスだから呪いがうじゃうじゃ溜まってるってさ!
……あれ、大丈夫?メンチ切るような顔してるけれど?」
……げぇっ、マジかー…。
昔社員として、の時点で察してつい嫌な顔をしてしまった。
『してねえよ?ここでメンチ切るなら先生にすりゃいいの?
……てか。えっ、まさか芥通信本社ぁ…?本気で言ってんの?だったら多分、通気だの防犯システムって理由での全社員休み、通達されても誰かしら真面目な人が出社してると思うよ?そういう所だもん』
任務だーっ!って気分が一気に下がる。芥通信本社…そこはかつて私が学校を卒業してすぐに入社した会社だった。
頑張って頑張って、理不尽にも耐えて耐え抜いたのに精神は大丈夫でも体は精神についていけず。人間の汚い部分が良く学べる会社と言っても良い場所だった。私の宙に浮いた残業代は証拠がないから手元にも来ないし、二度と行くかっ!と思っていたのに。
でも、今こうやって言われると確かに……あの皆の怒りや妬み、憎しみという感情渦巻く会社。数年立っても変わらず、今でも続けられているのなら呪いだって溜まっていく。
頬杖をつき、ふー、と過去を思い出す。
『……油性マジック持ってってお局の机に書きなぐってこ。規制ワードのオンパレード、マス目も書いてビンゴ会場にしてやらぁ』
「こらこらー!……ま、ビルの方はね、定期的に呪術師が祓いには行ってたけれどさ。あまりにも頻繁に出るモンだから呪いを祓いつつ、今回新しく呪物の設置に特級の僕が入る事になってんの。
そのサポートに恵とハルカのふたりを連れてくって事なんだけれど。
僕も中に入るから大丈夫でしょ、どっかの誰かさんが鉄砲玉したり、お局さんに悪さしないようにって意味で」