第17章 幸福に生まれ変われ
151.
『何故人は数学を勉強しなくてはならんのか……』
数学の授業を終えて机に突っ伏す。気分的に"罰祟り"を使ってないのに頭から蒸気がシュー…って出てるような気がする。悟じゃないけれど糖分が欲しくなるくらいに脳みそを使っていた。
先週末から今週を跨ぎ、なにか変わった事といえば互いの薬指に嵌る指輪の件と、リベルタの件を話してあとはいつも通りの皆だった。変に追い打ちをかけたりしない所が嬉しい。
野薔薇に鉄砲玉か?と背をぱちんっ!と叩かれたり、伏黒にあまり無茶するなよ、と言われたり、もうこれで狙われることが無くなったのは良かったじゃん!と虎杖が。
きっとあいつらはもう逃げ出すことは無いんだろうって思う。一度派手に被害を出しながら脱走して、ドンパチ暴れて構成員達は結構やられてるし。
それでも私の場合、ひとりで行動する事が危険なのはこれからも変わらないのだけれど。
さっきまでの座学を思い出し、突っ伏した上半身を起こす。眼の前には左にテキスト、真ん中にノート。そこには落書きの様にノートの端に書き散らした、斜めにどんどんズレていってる数式。途中から分かんなくなってまたいちから解き直してって……考えるのを止めたくもなる。
やんなっちゃうよなあ、色々あった後の頭のフル回転は。沖縄に戻りたい!って思いながら、右手の中でくるくるとペンを回す。
……祖母の葬儀に関しては龍太郎や五条家の人が手伝いながら春日の本家で準備してるらしい。
母の時に来た礼服、実家にあったっけ?後で取りに行かないとなぁ。学生は制服でも良い、なんていうけれど悟のカスタマイズで上半身の丈がちょっと短い。ブレザーをセーラー服みたいに短くするな、と文句言いたいけれど。二年に上がる時こそ、自分の意見を通そう。
色んな事が頭を巡っていて、もう先程の数学なんて考えたくなかった。
そんな私に続くのは虎杖。頬をむにっ、とさせながら頬杖をついてる。ちょっとやけくそ気味に声を荒げてた。
「足し算引き算とか分かればもうどうでも良くね?なんで中学も高専に入っても習うわけ?」
『ねー。長ったらしい式まで使って何求めんだよ、こっちが求めんのは糖分だわ』
『「ねー」』
もっと前からこの呪術という世界を知っていればまた数学なんて学ばなくても良かったのに。好きなことのループなら良いけれど嫌いなことを繰り返すのは辛い。