第17章 幸福に生まれ変われ
『えー…虎杖みたいに、七海さんの事ナナミンって呼べば良いの?』
「呼んでみ?拒否られるから!七海にその呼び方はナンセンス、クソです!って罵られるがいいっ!」
ククッ、と楽しそうに耳元で笑う悟。
よし!といつもの調子の声を出した瞬間に私からぱっ!と離れて腕を捲くり始めた。
そんな彼を見ていればいつも通りで元気そうでなによりなんだけれど……朝のことなんて忘れてしまいそうになる。
「ギリ貧血になるかなーくらいまで硝子回復させてるから、ちゃんと健康状態になれる様に今晩はこの五条悟、料理の鉄人と呼ばれし力を存分に奮わせて貰います!ハルカは座っててね」
『いや、流石に任せっぱなしはさー…罰ゲームじゃないんだし何かしらさせてよ』
椅子をギッ、と音を立てて立ち上がった。
ゲームなどで罰ゲームとして料理と片付けを賭けたりする時はあるけれど、具合が悪いわけじゃないのに任せるのは申し訳ない。
それに悟には特に私から迷惑を掛けているから尚更。
そんな私を見て動きを止めた悟はうーん、と考えてにっこりと笑った。
「……じゃあ、食器。食器とサラダ係を五条ハルカさんに担当させて頂きましょう!
あと、ご飯食べ終わったら僕をめいいっぱい甘やかして頂ければ充分なんだけれど出来る?難しい?難関クエストだったりする?」
……それだとなんだか私が甘やかされている気がするけれども。
悟なりに今日は安静にさせたいんだろうなって気遣いをしてるのが充分に伝わってきてる。
その気遣いには、私から優しく笑って返しとく。
『ん、もちろん出来ますとも』
体に不調はない。今は悟の優しさに甘えておこう。
けれどもこれからの私達には色々とやるべきことがある、例えば祖母の葬儀が近々行われたり。
術式の関係上、家から出ることがほとんどなかった祖母。
春日の分家とも言える男が生まれて婿に行った場合の親族や私の父や兄、それから祖母の身の回りの世話をしていた龍太郎。葬儀に参加する人は限られていた。
クリミア…、マリアについては本家に今は住んでいるけれど彼女は術式は治療関係ではなく、一般社会で医療関係者であったので時折京都の高専に通うだとか。