第17章 幸福に生まれ変われ
「いや、私もそこまで長居はしないさ。ふたりの邪魔になってしまうからね、そろそろ帰るよ。
色んな話が出来て良かったよ、ハルカ。また今度遊びに来る時はちょっと手土産を持ってくるよ。お茶、ご馳走さま」
『はい!是非ともまた来て下さーい!』
面白く無さそうなアイマスク状態の悟。口が尖って不服度を表してる。
そんな悟を見て、私は笑いそうになる口を隠しつつ。
『……ぷぷっ、…ボンボン坊や』
「……あ゙あーん?あっ、傑昔話したろっ!?どこまでハルカに喋ってんだよっ!」
傑はお土産を持ち、そそくさと素早い動きでとても楽しげに悟の部屋側へと急ぐ。それをちょっと追う悟。
「じゃあね、ハルカ!」
『はーい、またどうぞ!』
「または無いと思え、傑っ!おいっ!塩撒くぞ!?」
隣の部屋から「お邪魔しました!」という言葉とドアが閉まる音。悟はチッ、とため息つきながらドスドスと荒い足音を立てて自室方面に向かっていく。鍵でも締めに行ったんだろうけれど。
ドスドスとまだご機嫌斜めに戻ってきた悟は、座ってる私の近くに来ると、後ろからぎゅっと抱きつく。右肩や首筋、頬とぐりぐりと甘える様に擦り着いていた。
その悟を右手で撫でると耳元でねっとりと"もっと"と要求して。
「……何オマエ、傑と仲良くなってんの。傑さん、だなんて呼んじゃってさー……僕、妬いちゃうんだけれど?」
ぐりぐりと力強い擦り付き方。相当妬いてるようで。
『そうは言っても私、硝子さん、歌姫さん…って下の名前で呼んじゃってるけど?』
変な妬き方するなぁ。ぽふ、とふわふわした逆立てた髪を撫でていたら後ろから抱きつく片手が私から離れ、耳元で布の擦れる音がする、さら、という髪の音も。
横を見ればアイマスクを首元まで下げてちょっと困った顔の悟と目が合って、引き続きぐりぐりと頬と頬をくっつけられた。
「納得いかないんですけれど?七海とか伊地知は名字のままじゃん!なんで野郎に下の名前呼びすんのっ!そういうのは僕だけの特権なんだから、そうやって浮気しないで!」
ええー…名前呼びで浮気判定とか難しいな…。
そういうつもりではないので他の例を頭の中で探っていく。誰か居たっけ?