第17章 幸福に生まれ変われ
150.
悟はきっと夕方くらいには帰ってくるんじゃないのかな。急な任務で呼ばれてる彼を頭の隅に置きながら、同じく特級呪術師であり親友でもある夏油と部屋でふたりきりで過ごしてる。
突然の訪問者、夏油傑と時間を忘れるくらいに色んな話をしていた。傑は話をするのが非常に上手く、聞き取りやすく。ついつい話す話題に引き込まれるし面白い。
お土産を渡し終え、話し始めは私のリベルタ本部で復讐心のままに暴走した事で迷惑をかけてしまった事について……、を話していたのだけれど。あれこれ話が少しずつ逸れていき、高専時代の話や卒業後の話などを聞いた。もちろん悟の昔話も。
親友という事もあって、互いに支え合ってきたという事。天元様、というこの呪術界に無くてはならない存在に関連した任務の事や、傑が悩みを抱え、苦しんだ時に悟が話を良く聞き、一緒に行動し、一時は変な気を起こしそうになったのも止めてくれたって話だとか。
──"変な気"ってなんです?
そう質問する私に傑はにっこりと笑って「秘密」としか教えてくれないけれど。悟のようにちゃらんぽらんな事じゃなくてどうしてか仄暗いなにかを感じてそれ以上、深くには掘り下げる事は出来なくて。
そのまま、悪戯の話だとかしてたくさん笑っていたら傑のグラスがそろそろ空きそうなのに気が付いた。
『あっ、傑さん。お茶、おかわりいれます?』
作った麦茶は底を尽きて。でも冷蔵庫にペットボトルのお茶が冷えてる。お茶はお茶でも麦茶から緑茶に変わるんですけれどね?
傑はくすり、と笑った。
「ああ、ありがとう。それじゃあ……、」
そこまで言いかけた所でがた、という音が玄関の外から聞こえる。悟かな?戸締まりしてあるし、鍵を開けてるのかな?と玄関方向を振り返る。
「悟が帰ってきたんじゃないのかい?」
『帰ってきたっぽいんで迎えに行ってきます、行かないと拗ねるだろうしちょっとヨシヨシしてきますね~』
「ははっ、扱いを心得てるねー!」