第17章 幸福に生まれ変われ
そのツボもピークを過ぎれば落ち着いてくる。目の前のにこにこする夏油を見てぴたっ、と笑うのを止めた。お待ち遠様。やってきました、賢者のお時間です。
『……すいません、本当にすいません』
ぷっ、とちょっと吹き出すようにして肩を震わせ笑う夏油は、頬杖をついて人の良い笑みを浮かべた。お土産はちょっと離れた位置に置いて、頬杖をつく腕に空いた手を置いてる。
「あー、なるほどねっ!ふふっ、これは悟も君に夢中になるワケだ」
『……はい?』
なんのこっちゃ。自分で注いだ麦茶を飲みつつ夏油を見る。お昼がしょっぱいラーメンだったからってのもあるけれど笑いすぎて喉が渇いて。
グラスを置いて目の前の夏油をじっと見る。夏油も私をじーっと穴が空くくらいに見ているからなんだか目が逸したくなるなぁ……。瞬きながら少し私からゆっくりと距離を取った。
夏油は頬杖を解いて、机の上で腕を重ねて優しく微笑む。その表情を見れば……ああ、確かに。女の子ならちょっとドキッ、とするような引き込まれる良さを感じるかも。
「悟と一緒に居て君自身も楽しめるタイプだろ?ちょっと君といると悟といる気分になるんだ、私的にね?」
それって悟みたいに感じるって事だろうか?と首を傾げ、片手でナイナイ、とその夏油の言葉を否定すると、えー?って顔をされてしまった。
『えっ、私あそこまで失礼マンじゃないですってば。私のこと遠回しに貶してんです?褒め言葉じゃないですよ、悟といる気分になるって』
「……うん、確かにね。君への誹謗中傷になっちゃうね。じゃあ8割悟くらいにしとく?」
『それほぼ悟じゃないですかー…不服なんですけれど』
この時間に悟の話をしてるから、任務中の噂の彼はくしゃみをしてるかもしれない。
8割悟って言われて表情を歪めていると夏油は楽しげに少し声を出して笑っていた。