第17章 幸福に生まれ変われ
「……ええと、"子宝ちんこすこう"?」
『……んぷっ!…ふっ、ふふ…。
もっ、文句は……悟が受け付けます、ふふ、私は止めとけって言ったんですけれど……彼は爆笑しながら買い物かごに……っ』
必死に笑いを堪えながらポーカーフェイスでありたいのに、夏油のちんこすこうって声に出したことで腹筋が崩壊しそう。音読は卑怯、止めて笑いのツボにジャストミートするわ。耐えろ、耐えろ私…っ!
「ちん、ことわざカルタつき…」
『んっふ!……ううん、ナンデモナイデスゥー』
お願いだからこの静寂な部屋で音読はやめて。今にも爆笑してしまうわ。
ちら、と夏油へと視線を移すとにこにこした笑みを浮かべ、片手にお土産、片手で頬杖をしてる。
「──それさ、君は笑った?」
でもその柔らかい笑みに似つかわしくない、冷ややかな声のトーン。
……思い出すのは沖縄、2日目の水族館デートの後の話。
やっぱりお土産っていったら特産品が一番かなぁ、とちんすうこうやシークヮーサー、黒糖、紫芋、瓶詰めの海ぶどう……そういったものを見て回っていた時だった。
店内でそれぞれお土産は何にするかを見て回る中、悟がにっこにこで…そう、面白いモノを見つけた小学5年生くらいの満面の笑みで私に駆け寄って来たんだった。店内を走るいい大人(28歳、身長190センチの美形の男)。物凄く目立つ。
「ハルカ!ハルカ!ちょっとこっち来て!こっちこっちこっち!」
『何、ちょっと服引っ張らないでって!行くから!あーっもう!
服が伸びちゃうだろーがっ!』
「エレンかーい!……ほら、こっちだよ!」
腕に手の甲でペチッ、とツッコんだ後に私の手首を掴む悟。
服を引っ張る手は私の手首を引き、ぐいぐいと早足で向かう場所。河原の土手とかで大型犬に引っ張られる飼い主の気持ちを知りながら立ち止まった悟が指差す、お菓子の陳列。
そこにはパッと見は幼児向け、でも大人向きの商品とも見えるお菓子。ちんすうこうをそうパロディ化したか!というネーミングセンスと、ちんすうこうのありきたりな形を男性器に見立てた形状にしたもの。
プレーン、マンゴー、チョコとバリエーションがありおまけ(ちんことわざカルタ)付き。
その商品を悟は笑いながらに指さしていた。