第17章 幸福に生まれ変われ
「えー…ちょっと雰囲気さ~…ムードブレイカーじゃない?もう高専にウーバーイーツ頼んじゃえよ」
『駄目でしょ、ウーバーイーツ。だからゴージョーイーツに今頼んでる』
頼まれちゃったねえ、なんて言う悟にふふっ、と笑ってしまった。うん、いつもの悟に戻ってる。
そのままつま先立ちにちゅ、と口付けて離れようとしたら私を抱え込み、深追いするようにキスを求める悟。
『んっ…!』
空腹の獣が食らいつくように、食むようにかぷ、と何度か角度を変え、舌をねじ込んで絡めて抱え込む腕がキスをもっと深くへと沈めこんでいく。
『むっ、ぅ……、んっ』
口内をまさぐられて、くすぐって、どんどんその気になってしまいそうで。両手で悟の腕を掴み、離そうと抵抗すると悟はすぐに深いキスから解放してくれた。
息を肩でする私の前に、悟はにっ、と勝ち誇ったような顔をしてる。余裕たっぷりでちょっとむかつく。
「……っは、もっとハルカとキスしたかったのにな。すっごい名残惜しいんだけれど時間も押してるしこの辺で勘弁しといてあげる。続きは部屋に帰ったらしよう?
……行ってくるね、ハルカ」
互いの熱が逃げないくらいにしっかりと抱きしめる悟の頭を撫でながら、私はうん、と頷いた。
この人は物凄い寂しん坊なんだ。ひとり残してしまったら私が起きたての時のようにああなってしまう。今はふたりでこうも優しく、ぴったりとくっついていられるけれど、ひとりぼっちになったら、あんなにも暴走して壊れてしまうのかもしれないって事が予想出来た。
それは自分だけじゃなくて、悟の為にも生きなきゃって事だ…。
だから深く深く反省をした、自分の抑えられない感情に任せた行動が苦しめてしまうって事に。
『いってらっしゃい』
「…ん、行ってくる」
ゆっくりとした動作で離れる互いの体。悟はサングラスを外し、アイマスクに変えると笑顔で手を振って先に個室から出ていった。