第17章 幸福に生まれ変われ
『……さっきみたいに、痛くしない?』
殺す為とか痛めつける為じゃなくて、愛情がから回って歪んだ結果なんだとは思う。いくら夢見が悪くてそれを抑えられなかったっていっても、あの様な事は悟にとっては簡単に出来てしまう。止められなければ、あのまま……。
きょとんとした悟は私を誘う両手を下げ、ちょっぴり首を傾げて笑った。
「ん?そんなに痛かったの?あれ。そこまでオマエやわだったっけ?柔らかすぎるから?」
……無自覚かよっ!あれすっごく痛かったのに。
『どうせやわやわだよ。痛くしないように気を付けてくれるならするけれど…』
「うん、オマエが痛いって事を僕は進んでしたくないからしないよ。寝起きだったとは言え、痛くしちゃってごめんね?」
ふっ、と柔らかく笑ってもう一度両手を広げてる。胸の中に来いと誘ってる。
……仕方のない人だよ、悟は…。
距離を取っていた分、数歩近付いて悟の首に両腕を伸ばす。背に優しく回される腕は、さっきの痛すぎるような抱きしめ方とは違う、壊れ物を扱うような優しい腕の回し方だった。
鼻先が当たりそうなくらいに顔が近い。サングラスの奥の青はとても優しく見つめ返していた。それでもあんなにも燃えていたのが嘘みたいだ。
『……いってらっしゃい、悟。帰ったら色々と話したい事あるから、あんまり寄り道しないで帰ってきてよ』
「ん、そうねー。可愛いハルカにお土産くらいは買ってきたいからその寄り道だけは許してね?」
ふふ、と笑ってる。じっと私だけに向けられた視線が嬉しくて心臓が高鳴った。思わず、その優しい笑みに同じような笑みを返しながら。
『あとそれからさ、旅行行ってる期間があったから冷蔵庫の中身補充してないじゃん?夕飯の分とか明日の分とかも含めて色々と買い物もしてきて。甘いのばっかじゃなくてバランス考えてのあらゆる食材ね』