第17章 幸福に生まれ変われ
今の時間的にホームルームに間に合うから教室に顔を出すのか。
ちょっとだけ教師らしい一面を……ん、待って。いや、教師らしいってなんだ?
今の私は流石に無理のしようがない。服だって私服だし、わざわざ部屋で制服に着替えるのもちょっと大変で。ならこのまま寮へ帰って安静にしておこうって思った。
授業は明日からしっかりと受けよう。肩を落としていればその肩を硝子がシーツを抱えていない、空いた手をぽん、と乗せた。
「流石のハルカももう無理もしないでしょうに……、ハルカ、寮に帰ってゆっくり休みなよ、今晩は鉄分をしっかり補って……晩酌はナシね」
『……はい、そうします』
旅行帰りって事もあって冷蔵庫なんかあったっけ?
冷凍したぺらっぺらの肉ならあったけれど、買い物行きたくてもこの場合行けないしまだちょっとキレ気味の悟に頼みにくい。落ち着きを取り戻したってのに任務が入ったから数値が上がってる、的な。あまり刺激はしたくないんだけれど。
「それじゃ、」と血の着いたシーツを抱えて個室を出ていく硝子。ふたりっきりになった空間で悟はわざとらしく、はーあ、とため息を吐いた。
「任務行きたくないなー……でも無理に休み入れて貰って奥さんと楽しいひとときを過ごしてきちゃったからなー…。
あーあ!せめて奥さんからいってらっしゃ~い!の愛を込めたキスと励ましのハグハグぎゅーっ!…を僕にしてくれたら、どんなに面倒くさい任務でも頑張れるんだけどなー!」
個室とは言え大きな声、目の前に居る私に言ってるのがよく分かる。ちらちら見るんじゃなくてガン見してるし…。
急いでドアの方を見る、硝子が戻ってくる気配は無かった。悟に視線を戻せば口元に弧を描いて両手を広げてる。
「大丈夫、硝子は居ないよ。存分に悟君を愛してくれたまえ!」
そう謎のドヤ顔をされましても。
寝起き早々の事を思い出した。骨が軋むほどの強い力、腕が血が巡らないんじゃないかってくらいの圧迫感。呼吸が出来ないくらいの締付け…。