第17章 幸福に生まれ変われ
悟の瞳は青であるのに、どうしてか熱を帯びてるように感じた。いつもは澄んだ空の青に見えるのにどうしてか、青く燃える炎みたいで少し恐怖を感じる。寝起きで、夢と現実がごっちゃになった、とかが理由らしいけれど、それ以外に私が倒れる前の事だってある。怒ってるってのは分かった。
うーん、と声を漏らしながら、ちょっとぼさぼさした髪を手で梳いて。
……トイレに行くのに硝子や悟、どっちの人間にも流石に連れションを頼むのもなぁ、と首を振った。誰かに用を足してる音を聞かれるのは嫌だし。
『高専内だし、自分の体調不良についてはさっき治したんでひとりで行けます。
悟は来ないで。絶対にここから動かないで』
「どうして」
『どうしても。さっきの行動を思い出してよ』
少し食い気味な悟を見て硝子に悟を指で差す。硝子はサムズアップをして頷いた。ここは彼女に任せてそのまま私は個室を駆けて出て行った。立ち上がって駆けて行く時に頭痛もない。貧血状態は改善されてる……硝子の術式なんだろうけれど。
辿り着いた花園、ってかトイレ。良かった……人間としての尊厳を守れた、と落ち着く。あのまま悟にぎゅうぎゅうに締められてたら圧迫されて色々と出てたかもしれない。我慢しても気を失ってその後に尊厳を無くす事態になってたかも…。
ふと、降ろした下着を自分で見てハッ!とした。
『……あ。
あ、ああ~っ!!?』
普通じゃない下着という事に気付いた瞬間に両手で頭を抱えた。
結果として人間の尊厳は守れても、硝子に多分えげつない下着を着用しているという事がバレたに違いない。彼女なら健康状態をきっちり見るから、服の中をチェックする、絶対にする!
上半身もチリチリ小さい音するし!先端も擦れるし!ブラのヒモが緩まったとかそういう事態じゃねえや、くり抜いてあるやつじゃ先端守られてないもん!
それを、すっごくいやらしい下着を見られた、とか…っ!人間の尊厳が完全には守れてない、ちょっと崩壊してる……。
『個室に……戻りたくないっ…!』
ひとり鏡の前で嘆きながら、少しだけ戻る事に戸惑って。いつまでもここに居たら、トイレで倒れてるんじゃあって思われる。突撃されるのもまた迷惑かけちゃうし。
戻るしか選択肢がないってワケか。肩を落とし、私は個室へととぼとぼ向かうしか無かった。