第17章 幸福に生まれ変われ
『悟、痛い…っ離しっ……!』
ガタッ、とドアの方から物音。誰でも良いからとりえずなんとかして欲しい…っ!暴れるに身体全体を絞め殺されそうになっていて、拒絶も出来ない。ドアの方に誰かいるなら、悟を引き離して欲しい。
『離し、て……っだれ、か…っ』
「ん?……あっ!ばっ、馬鹿五条!あんたハルカに何やってんだ!?」
間隔の短いヒールの音と共に硝子が叫んだ。駆けてくる足音がする。それでも離れない悟から離そうと手を伸ばすもいつまでも触れない。硝子が舌打ちした。
「……っ、五条!ハルカが死ぬ!いい加減離せ!」
「……う、」
ぴた、と止まって緩められる拘束。きつく抱きつかれた場所にひんやりとした感覚からの血行が良くなっていく体。
『ごほっ、ごほっ……、』
数度咳き込み、ひぃ、ひぃ、と必死に呼吸を整えてゆっくりと上半身を起こした。体のあちこち軋んでいたけれど骨が折れたりはしてない。
見上げれば困惑した硝子、隣を見れば私と同じく上半身を起こして少し俯く悟。
「昨日の今日で衰弱しているハルカに何をしようとしてたんだ、お前は!」
「……あ?あー…ちょっと変な夢、見てた、からかなぁ…?」
「はあ~?夢の現実を混ぜてんなっ!ハルカが本気で死ぬ所だったんだけど?」
マジなトーンで悟が「…マジ?」と硝子に聞いてる。
呼吸を整え終えて、悟に怒っている硝子にそっと片手を上げた。
視線が悟から私に移動する。
『おはよう御座います、硝子さん。あの、ちょっとトイレ行きたいんで……この場から抜けて良いです?』
悟の説教をしているうちに済ませたい、だいぶ捲れた掛け布団から足を出す。上下とも旅行の最終日に着た私服だった。
ふう、と肩を落としながら安堵した表情の硝子が微笑む。
「ん、おはよ。ぐっすり寝てたよ、ハルカは。ちゃんと歩けるか?歩けないなら付き添うよ?私が」
「……いや、僕が着いてく。ハルカをひとりにはさせたくないし」