第17章 幸福に生まれ変われ
『悟、悟…さ・と・る!起きて!』
「んっ、何かな…?あっハルカ…起きた?起きられたんだ…、」
ちょっと起こされて迷惑そうな顔はたちまち驚いた顔に。そして柔らかく笑う顔。
「良かった……、ちゃんと生きてるよ…」
『うん…生きてるよ』
思い出されるのは復讐に駆られ暴走していた自分。
覚えてる限りだときっと悟が運んできてくれたんだって事。もぞもぞと悟は私をよりきつく抱きしめた。
「うん……ハルカだ。ハルカ、ハルカ……。あったかい、血の気がちゃんとある……、生きてる。
生きててくれないと困るんだよ。どうしてオマエは生き急ぐんだ?あれほど言ったのに、オマエの全てを頂戴ってしっかり言ってたんだけど?」
抱きしめる力が強くて苦しい、痛い。ふざけてるわけじゃなくて、本気の口調に聞こえる。
『悟っ、痛い、苦しいんだけどっ…!』
「何が苦しいんだよ、僕はもっとオマエを感じたい、寂しいの」
肩の辺りでぱき、と関節が鳴って暖かい体温が完全密着する。
点滴もしてんだけど、と右手を左腕に伸ばして外す。その痕も治したけれどもシーツに点滴液や溢れた血が零れてシミを着けてしまった。それでもお構いなしにゆっくりと力を込めていく悟。
『さ、と……っ、』
「強くなる事は良いよ、大歓迎。でもそのせいでオマエが死ぬのは嫌だね。言葉で言っても無駄なんだからこれは身体に教え込まなきゃ駄目だろ?もう僕から遠くに行かないで。お願いだからハルカ、僕の前から消えないで」
ギチギチ…ッ、と体が軋むくらいに苦しい。ここまで強く抱きしめられたのは初めてで戸惑いとこの力から逃れたい気持ちでいっぱいだった。
『う、ぐっ………!ざと…るっ、苦じいっ…!』
「離さない、絶対にもう二度とオマエを離さないから、ハルカ……っ」
これ、いつもの悟じゃない、本気でやってる。息をするのが苦しいくらいに締め付けられていて抱きつかれる体の節々が悲鳴を上げてる。冗談じゃなくて骨が折れそうなくらいに。