第17章 幸福に生まれ変われ
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規則的な呼吸と血色の良くなった顔。運んでいる時のあの状態を思い返せば今は十分に生きている状態である彼女を感じる。
背もたれ付きの椅子の、背もたれ部分に両腕を掛けてサングラス越しにじっと寝顔を見ていた。
やがて硝子がやって来てハルカの腕に点滴を付けていく。外はもう夕暮れ、硝子が「起きたら先に連絡な」と念を入れるように僕に言って個室から去って、しばらくしたら傑がやって来た。
ドアの音をなるべく立てないように気を遣って、静かに。
袈裟の姿でそろそろと足音を立てないように気をつけて僕の隣に立った傑。にこ、と笑ってハルカの寝顔をじっと見てる。
「報告書は提出してきたよ、リベルタのボスは失血死だそうだ……そりゃあ、この子が色々と……ううん、眠ってるからといって目の前で言うことじゃないね。
ハルカの容態は?」
「……ありがとうな。ハルカの容態についてはギリギリセーフ、硝子曰く僕がハルカを運んでる最中に死んでたかもしれなかったって」
それは運が良かったね、と僕を振り返り、また寝ているハルカの顔を覗き込んだ傑。
僕は掛け布団からハルカの片手を取り出す。左手は点滴中、本当は左手が良かったんだけれど。
その手を取って自身の頬を撫でさせていると傑が奇妙なものを見る視線で鼻で笑った。
「……何やってんだい?悟」
「ハルカの命の恩人の五条悟を褒めてもらってる……傑、見てみ、点滴してるハルカの手。どうよ?良いだろ?僕の可愛い奥さんの証」
覗き込んでる傑に、僕はハルカの手の側に左手を並べる。お揃いの一生モノのリングが着いてる。それを見てふふっ、と傑は笑った。
「……ちゃんと大事にしてあげるんだよ?」
「オマエに言われずとも。あ、LINE見た?うちの奥さん可愛いだろ?」
「はいはい、見た見た。凄まじい通知だったよ。私もおふたりさんの幸せオーラに当てられて胸焼けしそうになるね。流石甘党の悟、文字と画像も激甘だ…」