第3章 呪術を使いこなす事
「うわ、ちょっとハルカさん急になにやってんの!」
『安全確認しないと名前を言ってはいけないあの人が入り込んでるかも知れないでしょ!石をひっくり返したら居る、みたいな確認をこうしてね…』
「ノイローゼじゃないっすか、それ!幻覚見えてません?」
トイレ、浴室、玄関の施錠…そして明るい日差し差し込む窓に行き頬を付けて各所の確認をした。
オールオッケー、私は元の席に座ると悠仁もそろそろと元の席に座る。
『……よし、安全確認オッケー!
で、そのさ…しばらく恋人として演じるに至って、敬称略で名前を呼べって言われていてね。それまで私、さん付けで呼んでいたからうっかりすると罰を食らうんだよね。だったら名前を出さないほうが良いかなーって』
ふとした瞬間に悟さんって言っちゃいそうなんだよね。
私としてはそう呼んだ方が良いのに、悟は嫌がる…というか、言わせないようにして楽しんでいる。
不思議そうに伏黒は目をぱちくりとして眉を寄せた。
「罰ってあの人、何を設定したんですか?ハルカさんかなり先生を恐れてますけど弱みでも握られました?」
伏黒もゲンドウポーズを崩して、頬杖をついている。釘崎は私の真正面で未だに続けていた。
『何って……敬称つけたらキスされるっていう…』
「……はあ?キスって…、」
「オーマイガッ!へーえ、へーえ、へーえ?で?ハルカさん何回ヘマしました?」
急にイキイキし始めた釘崎に、少々たじろぎながら私は頭をポリポリ掻きながら人差し指を立てて答える、一回と。それを聞いて腕を組みうんうん頷く釘崎は目つきを鋭く私を指した。
「下の名前じゃなくて何故五条って呼ばないの?」
『初見時に自己紹介で悟って呼んでって言ったから………あっ、じゃあつまりは名字で呼べば良いって事か!』
悟さんって呼んでたからなぁ。だったら名字で呼べば解決だ。
釘崎の私を指したままの片手を両手で握り、上下に振った。
『ナイス!釘崎さん、天才かっ!?』
「言って!もっと言って!気持ちいいからもっと!」
『天才!キミはパーフェクトウーマン!』
「イイ!もっと!」
これでうっかりも無くなるだろう、と肩の荷が降りた…いや、ベンチから重い荷物ここに持ってきてるので実際に降りてるんだけれど、うっかり悟さんって言っちゃう問題は解決した。
法の穴っていうか、まさかを突いた発想。