第16章 覚醒のトリガー
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流れるように、パン、パシン、と敵意を持って近付くものを跳ね除け続ける悟。時折間に合わない時は無限が防いでる。
いつもふざけている事が多いから、こういった戦う悟を見るのは新鮮で。普段、一緒に過ごしてる間すらも彼は無限を解いてた。
……今はそのチート地味た術を使う、悟の背中がとても頼もしい。
「彼らも必死だねえ~」
ぱんっ、と呪霊の吐き出したドロドロとした黒ずんだモノを離れた場所に叩き落としてる。それは床に落ちると蒸気を出して落ちた黒ずみの形に下へと窪み落ちてる……。
『……っ、』
ぱっ、と悟の叩き落とした手を見るも無事で。これも無限での反撃か、と安心しながら一定距離まで着いていく。
体にムカデの様な呪霊を巻きつけ近付く構成員。私でも龍太郎でもなく、悟に向かって来ていた。
「五条、悟ゥ!」
「野郎に呼ばれても嬉しくないんですけど?」
すごい勢いでドン、という音と共に右側の壁へと飛ばされていった。ダッシュで来てたのに退去の方が早かった。
リベルタの構成員のひとりが、自身に纏わせたムカデの呪霊に何か印を結ぼうとしてたその瞬間には壁まで一直線に吹き飛ばされていった。
『改めて無限って凄いよね……』
その背中に呟けば、私の言葉を拾った悟が背中を向けたままに話しかける。
「ん?惚れ直しちゃう?僕への好感度振り切れちゃう?」
『……チッ、ハァー…』
「照れちゃって!もー」
……その一言、二言が余計なんだよなあ。
面積も高さも広い地下施設のタンクまであともう少し、ボスや人質まであと少しという所まで進んで、後方の私達にばっ!と手を出し立ち止まった悟。これ以上は来るな、と言いたげに。
「キミらはここまでになりまーす!僕は人質回収してここにトんで来るから。この辺りなら傑にもちょっと近いしね」
『悟っ!』
近付けるのがここまで、だなんて。僅かに焦る。もう少しなのに…!ボスも顎ひげもまだ手にかけてない。この空間に入ってすぐよりもはっきりと見える余裕そうなにやけた顔が良く見えるっていうのに……!
悟が横顔をちら、とこちらに見せる。口元は随分と余裕そうで。