第3章 呪術を使いこなす事
14.
──悠仁の部屋。
流石に部屋のコンディションの良くない、女の子のプライベートルームに入るのは躊躇う。私も経験がある。急な友人の来訪に"ちょっと待ってて!5分待ってて!"なんてやってたっけ。最近だと洗濯物とか干したままの私の部屋にズカズカと入ろうとした悟がいたけれど。
なので悠仁の部屋に4人が入り、色々と聞いてこうと思ったのだけれど。
机を挟んだ目の前の釘崎は真剣に肘を突き……そう、いうなればそれはゲンドウポーズをしてこちらを見ていた。
「ハルカさんはつまり……先生と"そういう関係"なんですね?」
その釘崎を見て、左側の悠仁もゲンドウポーズを真似る。肘が机にゴッ、と乱雑に乗る音、それを見た右側に座る伏黒もやれやれという表情で仕方なくやり始めた、なんだこれは尋問なのか?3人してそれは仲が良いのは分かるけれどさぁ。
「"男の部屋に行くな"、"浮気"……釘崎、明らかに誰が聞いても"そういう事"なんだろ。完全にクロだ」
「五条先生が謎の失踪からの女性を連れ込むって、最近旅行でもしてたんすか?」
「言わずもがな"そういう事"なんでしょ」
口元を隠すようにと、襟元まで上げていた服のファスナーを下げ、私も同じポーズをした。
傍から見れば4人が向かいながらゲンドウポーズをしている空間だ。しかも面白がって笑っていない、皆真剣な顔をしているからそれが逆に面白いんだけれど、質問が質問だから笑ってられない。
『さ…、じゃなくて名前を言ってはいけないあの人が、』
「それなんてヴォルデモート卿?」
良い突っ込みを戴きました、悠仁君。うんうん、と頷いて私は続けた。
『私が春日の血族であることを知らなくて、呪いが見えない状態で数日前にね。あの人が話しかけてきて、春日家に関わらせたくない父親に"恋人と旅行"という体でいこうと言ったのが始まり。実際は恋愛感情はないよ』
……多分、多分芽生えてないはずだ。
キスされてる時のはきっと余裕がないくらいに攻められていたからに違いない。だから頭が目の前の人のことばかりになっていたんだ。
私が始まりを伝えると釘崎は顔をより手に隠し、人差し指のすぐ上の鋭い目がこちらを向いている。