第16章 覚醒のトリガー
それを悟に伝えたらきっと、やっぱりオマエを連れていけない、となるんじゃないかって思えてしまって。まだ私にはその重い対価という意味が分からない。眼は良くてもきっとそこまでは把握出来てない悟には相談が出来ない。
サングラスをしまいアイマスクで目元を覆う。サングラスだと扱いにくいし、もしも眼を使う時にアイマスクなら下げるだけだもんね…。ふわさらな髪は立っていく。教師モードというか、一段と頼れる悟にチェンジしたっていうか。
「触れるだけって事はリベルタ騙しが効きそうだけれど、そう聞いたらあいつらにハルカを触らせたくないなあ。その手は温存しときな、とっておくからとっておきって言うんだ。いや、知らんけど『知らねえのかよ!』まあ、気分を入れ替えまして。さっ!ふたりとも行くよ!」
「はい!」
『…うん』
こちらを見た悟は肩に乗せたままの手をとん、と叩いて引っ込めた。
誰が着けたのか、電気の着いている施設へ。悟を先頭に私、龍太郎と駆け出し悟の背を見て着いて行く。
出口方面に一度通っただけの記憶。走りながらに一度振り返って龍太郎が着いてきてるのを確認しながら、真っ直ぐと伸びる通路を見て進行方向に視線を戻す。
たった一度帰りに通っただけなのに、腹の底からこみ上げるような様々な思い。怒り、憎しみ、殺意といった復讐心。自分の事ばかりだけれど、攫われたふたりについての心配ももちろんある。その気持ち以上に黒い感情ばかりが目立った。
悟の背をきっちりと追いながら、リベルタのボスと充分に痛めつけた顎髭の男、グロムにはどういったお礼をしてやるか?と考えながら奥へ奥へと突入していく。
ひとつ、角を曲がる。
カシャン!とガラスの割れる音、そして男の痛みによるうめき声。
通路沿い、手前の全開になったドア前で立ち止まる、つんのめるように私や龍太郎が止まった。
「あっ!先生…とハルカ!」
「今僕らも合流した所!悠仁と野薔薇、状況はどんな感じ?」