第16章 覚醒のトリガー
「旅行帰りかつハルカが着いてくるって利かないのよ。でも逆にハルカを囮にしておびき寄せる事が出来るしねー」
『本人たっての希望です』
そっスか…、と不安そうに返す新田。言いたい事はなんとなく分かる。行かない方が安全であるって事くらい。それでも私情で行くという意志が変わらない。
新田が私達に近付くプラカードを持った人達にどうどう、と規制してる。龍太郎はスーツだけれど私と悟は旅行帰りの私服。それが特に気に入らなかったらしい。どうしてその人達は規制されてないの!?と苛立っている声を聞いた。
「……ハルカ、」
たんっ、と音を出して悟が私の肩に手を置いた。見上げればちょっぴり困り眉で微笑む悟。
「僕から絶対に離れずに、それで僕が前線に行った時は後方に……なんて言ってもオマエは無茶をするんだろ?さっきの龍太郎みたくさ」
悟の言葉に縮こまる龍太郎。
「先程の行為はすみませんでした…」
「しょうがないよ、僕だってハルカが囚われてるなら同行者を蹴散らして行くし」
そんな悟の言葉を聞き、私が助けられたあの時の夏油や虎杖達も苦労してそうだな、と当時を考える。龍太郎から私へと戻された悟の視線。
「ハルカ。その拡張術式、どこまで行ける?」
『……触りさえすれば。最悪、相手に捕まった時でも』
私の中から去る前に鎹は言っていた。
元より式髪とは、今では髪に移しているものだけれども初めは鎹の肉体そのものに相手の"負"を移す身代わりだった。そこから強い呪いを受け、受け継がれ、髪へと完全に移していく形式に変わっていったって事。
大きな技こそそれなりに返ってくるものも大きい。私の中での解釈で生んだものは髪以上のものを要求するはずだ、と。
"なぜ、負の力でありながら人を治療出来るのか。それは一族を呪う…自身を攻撃しているからだ。お前の考えは正論だ"
"その自身を攻撃しながらに自他を治す、その副産物をまるまると相手に移し込むのだというんだな。それはもはや髪の呪力だけでは賄えない力だ"
"──式髪の白髪化よりも重い対価を払う事になる。くれぐれも使いすぎないように……一族の存続はお前ひとりにかかってる"
一族の存続はお前ひとりにかかってる、とかプレッシャー掛けてさ。