第16章 覚醒のトリガー
新幹線ならそりゃあ乗ってるしか方法がない。大人しくせざる負えない。けど東京に着いたら目的地は都内であるから焦りもする。祖母かマリアか。それとも両方の存在か。彼にとっての大切な存在なのだとこの行動に理解が出来た。
……悟も、こんな風に私を助けに来てくれたのかな。一生懸命に助けに行こうとする姿を見て想う。一度振り返ってすぐに前方の龍太郎の背を追い続けた。
しっかりと側まで追って来ている悟。それだけでも今の私を安定させてくれる存在。龍太郎に助けられた私が出来るのは悟と共に追ってリベルタに囚われたふたりを救助する事。
復讐だけじゃなくって、ちゃんと龍太郎が安心出来るようにふたりを助けなきゃいけないなと改めて思った。
必死に走る私達に驚いて、前方から向かってくる人達は横に数歩避けてくれて、その度にすいません、と声を掛けて…。
ロータリーに高専の車が見えた。手配済みでやはりリベルタそのものが問題の山積み案件の組織って事もあって、結構な台数来てる。その高専の車に乗り込むのかと思ったけれども龍太郎が乗り込んだのはタクシー。
悟を振り返って私も後部座席に乗り込むと悟も乗り込む。見える位置の高専の車から窓から顔だして「五条さん!?」と、驚いてる顔が見えるけれども龍太郎は呪術に詳しいとか高専に関係してる訳じゃないから見分けがつかないのは仕方ない。今更それを知った所で降りて乗り直す時間も惜しいらしく。
龍太郎は息を切らしながら行き先を運転手に伝え、私と龍太郎は呼吸を整えた。
すぐに発車するタクシー、そしてはぁー…、と車内全体に聴こえる悟の大きなため息。
「……あのね、心配なのは分かるけれど龍太郎君、こういう無鉄砲なのはやめな。ハルカも巻き込んでさ。
ハルカ、僕よりも先に突っ走ってったろ?それ、駄目。彼の後を追ったのは良いけど今から行く先でそれをやったらちょっといい加減僕も怒る。ビンタするから」
「……すいませんでした、五条…悟様」
ピリ、とした車内になって龍太郎と顔を合わせて、そのままに悟を向く。サングラスの表面に当たる、光の加減で瞳が見えない。眉の感じから怒ってる表情だけれど……。
『努力は、する。もしも私が暴走したら殴っても良いけれど。でもさ、助けられる状況ならば早く駆けつけたいって言うのは私も分かるんだよ。
……といっても、私は助けられた側なんだけれどね』