第16章 覚醒のトリガー
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行く前みたいに着替えやサンダルなどを詰めたキャリーバッグや、二日目に買っていたお土産などの多くの荷物を宅配で先に送ってある。それで京都に立ち寄るつもりだった今は軽めの荷物だけを持ってるってわけで。
お土産は悟が手に持ち、本家の玄関に置いてきているから身軽な状態。ぱっと見て沖縄に行っていたとは思えない、のに。
こう事件が起こってしまって、姉妹校の人達に会う事になってしまった。多めに買っていたお土産も宅配で送ってるから東京に戻れば渡せたんだけれどねえ…。
修学旅行にはしゃいでるみたいな大の大人が私の隣に居るんですけれど。
「ごめんねー!皆のお土産はないのよ、だってほぼ手ぶらだからっ!」
はしゃぐ悟が座席に膝立ちし、座席のヘッドレストに両手を掛けて後ろの席の方に話しかけている。
私が自問自答をしてぼーっとしている間に同じ新幹線には京都校の人達がぞろぞろと乗りこんで来ていて、自分の中に答えを出し、正気になった後にそれを知ることが出来たのだけれど。
はしゃぐ悟の脇腹の先、通路を挟んだ座席には龍太郎が思い詰めたようにしているのが見えた。
……祖母については龍太郎がどう思ってるかは知らない。マリアという私の世話係の女性も攫われている。リベルタの本部で何度か接触したり、組織の解体後に龍太郎とマリアは打ち解けて来たんじゃないかと思うけれど…。
今はこうもはしゃぐ雰囲気ではないと言うのに私の隣の席の悟はキャッキャと騒いでいた。周りから見たら隣に座る私は困った顔をしてるだろうな、と思う。早くこの人をなんとかしなければ……、と悟のポケットからアイマスクを引っ張り出す。
悟はちら、と私を見た後ににこにこと後ろの座席方面を見ながらはしゃぎ続けていた。
ポケモンのゴニョニョならぬゴジョジョか?公共の場でこうもさわぐんじゃありません。
チッ、と小さく舌打ちをして悟を見上げた。
「でも想い出話はいっぱいあるから聞いとく?形のないおみやげ☆
聞きたい?聞きたいよね?じゃあ話してあげるからねー!」
「五条あんたね、学校関係者以外もいるんだから静かに出来ないのっ!?」
「んふっ、ちょっと歌姫そんなに想い出話聞きたいからってがっつかないでって、物事には起承転結、序破急があるからねー、あっ序破Qじゃないよー?」